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厳格的殺人鬼社会「春夏秋冬」常冬編
「無常、昼休みになったら生徒指導室に来なさい」
 四時間目の授業が終わったところで、教室から出ていこうとする担任の英語教師に声をかけられた。用件はおそらくいつもと同じだろう。
「わかりました」
 力なく返事をする。いくら注意されても、これは体質なのだから、直しようにも直らない。それにも関わらず、何度も何度も繰り返し注意されるのは、さすがにいささか時代錯誤であると思う。
 授業道具をしまい、制服の上に着たダッフルコートの上にもう一枚ジャンパーを羽織ると、常冬は廊下に出て、生徒指導室に向かった。廊下は、教室内よりも寒い。
 とかくこの世は寒すぎる。
 
 生徒指導室では、担任がすでに座って待ちかまえていた。思えば、今年の四月はまだ優しげな顔をしていたのに、今目の前にいるのは同じ人物かと疑いたくなるくらいの形相をしている。たった三ヶ月でこうも顔が変わるものなのだろうか。
「座りなさい、無常」
 そういわれて、大人しく担任の前に座る。とたんに寒気がした。どうやら、自分の座っている位置に冷房の風が吹き付けているらしい。
「もう何度もいってると思うが、おまえの服装のことだ」
「寒いものはしかたないじゃないですか」
 常冬は当たり前のように返した。自分の体質なのだから、直るものでもないし、人にとやかくいわれるようなことでもない。なにせ寒いのだから。
「だとしても着すぎだろう。一体何枚着てるんだ。今八月だぞ」
「・・・・・・六枚着てますけど」
「おかしいとは思わないのか?」
「ぜんぜん」
 下着の上に、長袖のTシャツやインナー類が三枚、制服のYシャツ、リボン、カーディガン、ベスト、セーター、ブレザー、ダッフルコート、ジャンパー、スカート、タイツ、と、これだけ着てもまだ肌寒い。冷房が当たる。もう一枚服がほしい。そもそもスカートが寒い。男子と同じパンツスタイルにしてほしいくらいだ。
「校則違反だぞ。脱げ。重くないのか」
「大丈夫です。帰っていいですか」
 もう聞きあきた話だ。常冬は立ち上がる。こんな寒い部屋に長くいたくない。
「おいまて常冬」
 立ち上がろうとした常冬の腕を、担任が掴む。
「座れ。脱げ」
 担任の唇が歪む。薄い笑い。たぶん担任は自分が正義だと思っているのだろう。あながち間違ってはいない。人間が殺人鬼をどうしようと、罪にはならない。
「やめてください」
 担任の手を振り払おうとするが、それよりも、相手が覆い被さってくる方が早かった。担任の手が、服の上から常冬の胸をさする。
 罪にはならない。罪にはならないが、常冬は抵抗した。
「やめてください先生!」
 突き上げた指が、担任の左目に突き刺さる。眼球を押しつぶす感触とともに、右手の薬指が眼腔へと入っていく。
「あああああああああああああああああああああああああ」
 担任の体が常冬から離れた。目を押さえ、椅子や机を蹴倒しながら、床にうつ伏せに倒れる。
 立ち上がった常冬は、倒れた椅子の足を掴んで、担任へと振り下ろした。
「やめてください先生!」
 椅子の背を担任の背中に叩きつける。担任の体がエビぞりにのけぞった。担任の口から、血と空気が声にならない叫びとなって漏れる。
「やめてください先生!」
 再度背中に椅子の背を叩きつける。担任の体は大きく痙攣し、空気音とともに血が口から吹き出す。指先はまだ動いている。
「やめてください先生!」
 三度背中に叩きつける。血と空気は漏れだしたが、声は出なかった。指先の動きが止まる。
「やめてください先生!」
 椅子の背を垂直に首へと振り下ろす。首がくの字に曲がり、跳ね上がった顔が見えた。白目、目鼻口からの出血。
「やめてください先生!」
 背を横殴りに担任の頭へスイングする。うつ伏せだった顔が一瞬上を向き、その後で側頭部が床を叩いた。
「やめてください先生!」
 椅子の足の先端を、こめかみに向かって突き下ろす。足が頭の皮膚を破り、頭蓋を破壊し、脳髄を貫通して頭の反対側に抜けた。
「・・・・・・寒」
 常冬はそうつぶやくと、椅子を下ろした。足下には、担任だったものが転がっている。冷房が身に刺さる。常冬は、小さくくしゃみをすると、生徒指導室を後を出た。これ以上は寒くていてられない。
 ◆       ◆
 放課後。
 常冬は部活動はしていないので、常にまっすぐ家に帰る。運動部のようなユニフォームを着ていたら寒くて死んでしまうし、文化部にしても、自由に室温が調節できない以上常冬にとって居心地がよい場所ではなかった。
 常冬の住むアパートは光熱費がかからない、殺人鬼専用の公共宿舎である。人間が殺人鬼を社会からできるだけ遠ざけようと作った施設だが、暖かい場所を作れることに変わりはないので、常冬には都合がよかった。
 自分の部屋に入った常冬は、服を一枚脱いで、エアコンの真下にあるベッドに横になり、布団を頭から被った。常冬が最も幸福だと感じる瞬間だ。
 十分ほどそうして、帰宅途中で冷えた体が暖まったところで、常冬はテレビをつけた。動かずに見れる娯楽として、テレビはとても優秀だと常冬は思う。
 テレビに写っていたのは、公営放送の殺人鬼特集だった。殺人鬼の誕生と殺人鬼法についての二章構成らしかった。
『――殺人鬼の始祖となるのは、一人の男の殺人鬼だといわれています。これは、国が標本として採集した殺人鬼の遺体のDNAや染色体の構造を調査したところ判明したもので・・・・・・』
 殺人鬼というのは、皆血が繋がった兄弟姉妹だということだろうか。とはいえ、人間も、根元的には一つのミトコンドリア・イブに帰結すると聞いたことがある。それは殺人鬼とどう違うのだろう。
『――元々、殺人鬼というのは、犯罪加害者、容疑者の自称であると警察でも思われていました。しかし、世界中で同様の事例が報告され、殺人鬼を名乗る犯罪者たちの細胞や精神構造などを研究するにつれ、彼らが人間とは違った存在であることが明らかになっていったのです・・・・・・』
 姿形が同じだったら同じ人間なのだろうか。逆に言えば、姿形が違うのならば、人間ではないのだろうか。奇形や隻腕、盲目者などは人間ではないのだろうか。
『――これらの殺人鬼に対応するために、日本では、世界各国に先駆けて殺人鬼法を制定、殺人鬼による殺人を、違法としないとするとともに、殺人鬼の数や実態の調査のため、殺人鬼に対して殺人鬼免許を交付し、更新を義務づけました。しかし、この殺人鬼法が必ずしも守られているとはいえません』
 殺人鬼なのだから、人間が作った法律に必ず縛られる訳はない。貯水管理にダムを作ったとしても、豪雨や劣化でダムは決壊するし、ダムを作るにも多額の費用がかかるだろう。
『――我々は、近年ますます増加する殺人鬼に対し、ますます警戒し、殺人鬼に対する理解を深めていく必要があるでしょう・・・・・・』
 殺人鬼は概ね人間を理解している。同様に、人間が殺人鬼を理解することはさほど難しくないだろう。少なくとも、一部の知識人は殺人鬼にどのように対応したらいいのか分かっているだろう。だが、そうではない人間の方が圧倒的に多いのもまた事実だろう。――それが直らない限りは、殺人鬼は人を殺し続けるだろうし、人間は、殺人鬼をおそれ続けるに違いない。
『――近年では、殺人鬼狩りを自称する集団が、日本の都市部や、世界各地の主要都市で出現し・・・・・・』
 テレビはまだ終わっていなかったが、常冬はテレビを消し、もう一度布団を深く被り目を閉じた。部屋は相変わらず暖かい。
 了
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