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厳格的殺人鬼社会「春夏秋冬」常秋編
 無常常秋は日が暮れた町中を散歩していた。それに、もう十分も前から、後ろから誰かがつけていることも感じ取っていた。周囲には万全の注意をしていたつもりだったが、相手方の執念も相当なものだといえた。
 そもそも、今の日本において、夜、一人で出歩くことがどれほど危険か分かったものではない。女性の夜歩きが危険であるとかの次元ではなく、それこそ、男女が全くの平等に、殺人鬼という危機におののいているのが、日本に限らず、世界中の今だ。
 だが、常秋はそういった殺人鬼に怯える側ではない。むしろ逆――常秋本人が、当の殺人鬼であった。
 だから常秋にとって、背後にひたとついて離れない相手は、それなりに不気味で、理解不能な存在だった。たまたま同じ方向に向かっているということはないだろう。常秋は相手を撒こうと何度か道を変えている。だとすれば、昨今出てきた、いわゆる『殺人鬼狩り』の連中か。
 人間の方も、ただ殺人鬼に殺されてだけいるわけではなかった。殺人鬼というものをなんとか制御しようと、殺人鬼法を制定したり、殺人鬼を公的機関で登用したり、はてまた、殺人鬼に対する自警団を作ったりと、様々に殺人鬼に対する対応策は練られている。その中で、近年急速に台頭してきたのが、殺人鬼狩りを自称する一団である。
 殺人鬼狩りのやることは、いうなれば殺人鬼を集団リンチして、完全に生命活動を停止させることであり、構成員は多くが十代から二十代の若者だ。殺人鬼狩りをしようとして返り討ちにあったりもしているが、それでも、殺人鬼の数が減るならと、多くの場合が黙認されている。中には、自分の手柄を自慢しようと、殺人鬼に対して一体一での殺し合いを求める手合いもいるらしい。
 常秋を追っているのもそれだろうか。
 常秋も、追いかけっこにそろそろ飽きてきたところだった。特に帰るところがあるわけでもないが、こうもつきまとわれてはたまったものではない。
 常秋は近所の公園へと足を進めた。以前はそれなりに人がいる公園だったのだろうが、少なくとも、今は全く人の気配がない。
 公園の真ん中まできたところで、常秋は振り返った。立っていたのは、髪を金と黒で左右に染め分けた男だった。手には、細めの鉄パイプが握られている。
「あんた、殺人鬼だろ」
 質問ではなく確認だった。おそらく、ここで否といったとしても、この男は襲いかかってきただろう。――そういうことが、『できる』人種に違いない。
「そうだ」
 常秋は短くそれに答える。話しても分かることなどない。殺人鬼は人間に対してなにもいうべきことなどない。人間が分かろうと分かるまいと、それは殺人鬼には関係ない。
 男が鋭く一歩踏みだし、鉄パイプでの突きを放ってくる。常秋はそれを後ろに大きく跳んでかわす。そこへ重ねるように下段足下への三連突き、胴への払いが襲ってくる。それらをなんとかかわして、常秋は大きく男と距離を取った。
 獲物の長さもあるだろうが、向こうも相当に慣れている様子だ。主導権を取られれば、本当にやられるだろう。常秋は腰の後ろに差したナイフを引き抜いた。刃渡り十五センチほどの、どこにでもあるようなナイフだ。特に愛着もない。
 男は鉄パイプの先で軽く地面を叩いた後、一息に踏み出してきた。袈裟に降り下ろされる鉄パイプを身をよじってかわす。かわしたまま踏み込み、男が降り下ろした右手の手首に切りつける。手応えがあった後はすぐに身を引く。長物を持った相手にはこれが一番効く。
 男の手首から勢いよく血が流れ出す。思っていたよりも深く切り込めたようだ。男が顔を上げ、再び攻撃してくる。胸の中心への突きは鉄パイプを脇から叩いて受け流し、逆に右腕の肘へと刃を一閃させる。薄い傷だが、ダメージは十分だ。
 常秋の連撃に、男の目の色が変わった。足下へ大きく薙払いをかけてくる。常秋がそれを飛び上がってかわしたところへ、腹をねらった突き。常秋はそれをナイフで受けるが、当然そこで体制が崩れる。着地したところで、下から振りあげられた鉄パイプが右手からナイフを弾きとばした。男が踏み込んでくる。短く持った鉄パイプが腹にたたき込まれ、常秋の腹に激痛が走る。常秋はなんとか鉄パイプを掴むが、先に男の頭突きが頭に入る。よろめいたところで、とどめとばかりに鉄パイプが横殴りに顎をとらえ、常秋はその場に倒れた。
 なかなかやる、と常秋は心外に驚いた。殺人鬼狩りが皆これだけの連中だったとしたら、将来的に、殺人鬼は存在しなくなるのかもしれない。
 顎の骨が折れたかもしれないが、内蔵のダメージは僅か。一方向こうは出血がひどいはずだ。耳に男が歩み寄る音が聞こえてきた。このまま寝ていては、頭を潰され心臓を突かれて死ぬばかりだろう。
 男の足が目の前で止まったところで、常秋は男の足に組み付いた。男の驚いた顔が見える。構わず、間接を極めて男をその場に倒す。男が短く持った鉄パイプで常秋の頭を突いてくるが、逆にその手に噛みつく。男が手を引っ込めようとする前に、小指と薬指を噛みちぎる。瞬間、男の苦悶の声が響く。
 常秋は立ち上がった。男は右手首と肘からの出血、さらに左手の指二本を失って、その場から立ち上がらなかった。常秋は男が手放した鉄パイプを拾い上げた。接続部分を先にして、めいっぱいに長く持つ。そして、力一杯に男の頭に降り下ろした。男の頭が割れて、血液と脳髄がまき散らされる。男は両手を軽く痙攣させ失禁した後、動かなくなった。
 常秋はそれを見遂げると、鉄パイプを捨てて、その場を後にした。
 傷も、明日までには癒えるだろう。
 ◆       ◆
 翌日、目覚めた常秋は、まず顎に手をやった。昨夜の傷はほぼ完全に治っている。今日一日あれば完全に元通りになるだろう。いや、完全な元通りではないか。体の新陳代謝で新たに治ったという通常の人間通りの解釈をすれば、元の通りということはあり得ない。
 常秋は身を起こした。昨夜のねぐらは、ホームレスを刺し殺して得たダンボールハウスだった。すぐ傍らに、血塗れのホームレスの死体が転がっている。殺したのが夜だったおかげで、さほど腐敗も進んでいない。季節がら、だいぶ涼しくなってきたとはいえ、放っておけばすぐに腐敗していくだろう。
 衣服を点検する。あちこちに血の斑点があったが、さほど問題はないだろう。ポケットの中の殺人鬼免許証を確認すると、常秋は外にでた。秋めいたの空気が常秋の顔をなでた。
 ダンボールハウスのあった橋の下から道路にでる。通勤通学の時間帯らしい。先を急ぐ車や、高校生が乗った原付などが多い。
 何か腹に入れておきたところだが、今の時間では、どこの店も開いていないだろう。せいぜいコンビニ程度が関の山だ。殺人鬼はよく人の肉を食すなどといわれるが、常秋は人肉はさほど好みではなかったし、昨日殺したホームレスなどはあまり肉付きがよくなく、生物量的に得ることのできるエネルギーが少ないからあまり食っても意味がない。
 ガードレールの外から道路を眺めながら食事の算段をしていた常秋だったが、突然に交差点からけたたましいブレーキ音がなり、瞬間的に目がいく。見ると、右折しようとした高校生の原付が、対向斜線の乗用車と激突したところだった。
 原付の方は横っ腹からはね飛ばされたようで、原付のパーツと、高校生の鞄の中身が周囲に散らかり、交通を妨げていた。
 乗用車の方もスピードを出していたらしく、正面が大きくへこみ、割れたライトの破片が四散していた。
 高校生は原付から投げ出され、道路の左端に寄せられていた。横たわった体の下に、血が染み出している。跳ねた乗用車の運転手が出てきて、高校生の様子を確かめだした。
 常秋は小さくため息をつく。あれくらいなら運がいいくらいだろう。交通事故にあう確率と、殺人鬼に遭遇する確率、どちらが高いかといえば、答えは一つ「全く同じ」だ。程度の違いこそあれ、ここで交通事故にあうことと、昨日の夜刺し殺されることは全く同じ確率で起こり得たことだ。何に遭遇するかは――運命だとか、そういうもので決まってでもいるのだろうか。
「あんた、殺人鬼かい?」
 唐突に、脇から声をかけられた。声の方を向くと、ホームレス然とした男が、疲れた目でこちらを見ていた。
「どうして分かる?」
 殺人鬼は外見は人間と大差ない。それこそ、殺人鬼狩りのような、鼻のいい奴くらいにしか分からないはずだ。
「さっきそこで、山さん死んでたよ。やったのあんただろ」
 昨夜殺したホームレスの仲間か。
「そうだ」
 常秋が肯定すると、男は顔をくしゃくしゃにして笑って、いった。
「じゃあ、俺も殺してくれ。もうたくさんなんだ」
 常秋はさほど驚かずに男を見つめ返した。男が続ける。
「あそこで、高校生が事故ってるだろ? あんな若い子があそこで事故ってて、俺みたいな未来も何もない奴がこんなところで生きてるのはおかしいだろう。不公平じゃないか」
 男のいうことに感心しつつ、常秋はナイフを懐から出した。常秋は殺人鬼だ。殺せといわれて、殺さない理由はない。
「殺人気にあえるなんて、ラッキーだった」
 常秋は、世界を知るものが減っていくことを実感しつつ、ナイフを男の首へと走らせた。動脈と気管が切断され、血飛沫とともに男の体が傾斜し、河川敷へと転がり落ちていった。
 交差点に目を向ける。事故現場には、救急車が来たところだった。
 了
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