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厳格的殺人鬼社会「春夏秋冬」常春編
 無常常春が目を覚ますと、自分の手が死体の口の中だった。どうせ寝相が悪かっただけだろう、と自分を納得させると、毛布の上の眼球を払いのけ、ベッドから起き上がる。
 足元にあった生剥ぎの皮で足を滑らせながら、階段を下りて一階のキッチンへ。キッチンへの扉に腸が巻きついていたので、引きちぎって捨てておく。
 いつも通りの腐敗臭を胸いっぱいに吸い込み、今日も朝が来たことを実感する。冷蔵庫から野菜ジュースを取り出し、食器棚からコップをとってそれに注ぐ。
 野菜ジュースを飲みながら、テーブルの上のクラッカーを取る。それを電子レンジの角皿にあけ、上にチーズとケチャップをぶっかける。レンジを二分に設定すると、飲み終わったジュースのコップを流し台において、新聞を取りに行く。
 玄関の扉には、ノブをがっしりと握った右手が、肘の辺りからくっついていた。常春は切断面を持ってノブを回し、器用に扉を開けた。靴は履き替えず、裸足のまま外に出る。
 新聞受けには、朝刊と、一通の封書が入っていた。水頃市の端であるこの辺の地区は、この時間に配達がくるはずが無い、常春は裏返して差出人を見る。
 差出人は、『殺人鬼免許交付センター』となっていた。そういえば、この前の免許更新からそろそろ一年経つころだ。封を破ると、一枚の地図と、案内の文書が入っていた。
『無常常春殿
 前回の免許更新から一年が過ぎましたので、免許更新の通知致します。今週中に、別途の地図に記しました場所までお越し願います』
 常春は地図を見た。水頃市の丁度反対側だ。これならば、今日中に行ってきたほうがいいのかもしれない。常春は、今回はどんな試験が行われるのか不安に思いつつも、部屋に戻った。
 ◆       ◆
 常春が試験会場につくと、自動的に職員が常春を案内した。胸には殺人鬼教会のロゴ入りバッヂ。
 前年と同じように、広めの立方体の部屋に連れられる。精々十×十という広さで、全ての平面が白で塗装されている。その白が途切れるのは、壁の一番上に設置されている監視用ののぞき窓と、天井に用意されたシャワー、床の排水溝、その程度だ。
 常春が少し待っていると、入り口の扉が開き、二人の男が入ってきた。
 一人は面接官で、箱の上に担当やナイフ、ククリや青竜刀といった刃物形の凶器が置かれている。面接官は白衣に身を包み、冷たい目で常春を見ている。
 もう一人は、手錠で両手を繋がれた男だった。頭には布を被せられており、これから何が起こるのかわかっていない様子だ。
 試験官は無言で常春に凶器を選ばせた。常春は少しの間迷っていたが、結局、刃渡り十センチほどの短刀を選んだ。普段一番使い慣れているナイフに近かったからだ。試験官は手錠をされていた男の布を外し、手錠も外した。試験官は常春のものと似通ったナイフを渡すと、男の困惑顔もそのままに部屋から出て行った。
 やがて、部屋全体に響き渡る音量で放送が始まる。
『試験者、無常常春。対戦死刑囚は斉藤祐市。間違いありませんね?』
 質問というよりも、ただの確認だった。有無を言わせぬ迫力がある。斉藤はますます困惑の色を強めた。
『では、試験者はいつも通りに。対戦死刑囚に説明します。これが貴方の死刑方法です。貴方にはこれから殺しあってもらいます。負ければ死にますが、勝てば釈放します。説明は以上です』
 斉藤の顔が汚らしく歪んだ。それと同時に、試験開始のブザー、十一時丁度のブザーが鳴り響く。
 常春の動きは一瞬、春疾風のごとき。短刀の一閃は斉藤の腹部を深く切り裂いた。
「ぎゃああああああ、痛いぃひぃいいい」
 斉藤はその痛みに飛び跳ね、ナイフを取り落とす。常春は失望したような表情を浮かべながら、ナイフを逆手に構え直した。横に一閃。斉藤の両の眼球がきれいに裂けた。
「ひいい!? 暗い、暗いよおおお」
 斉藤は暗所恐怖の兆候を見せながら床を転がっていく。純白の床が赤く染まっていく。常春は激しくのた打ち回る斉藤の動きをものともせず、短刀で斉藤の右手首を切断した。断面から鮮血が噴出し、床に白と赤のコントラストを作る。斉藤の動きが止まりかけたところで、常春の槍のような蹴りが斉藤を大きく後ろへ吹っ飛ばす。斉藤はよろよろと立ち上がるが、そこへ常春が襲来する。
「いやああ、死にたくないぃ、死にたくないぃっぃいぃぃぃぃっぃ」
 常春の手の中の短刀が舞い踊る。
 斉藤の足首が切り落とされた。
 斉藤の右腕が肘から切断された。
 斉藤の左耳が切り落とされた。
 斉藤の左足が太ももの半ばで切断された。
「あ、あはは、ははは」
 笑い始めた斉藤の首が墳血とともに切断された。
『――終了してください』
 アナウンスがかかり、常春は手を止めた。丁度、斉藤の首が転がって行き、反対側の壁にぶつかったところだった。
 ◆       ◆
  常春は試験を終え、電車で帰路についていた。免許は即日交付で、その場で顔写真を撮ってから新品の免許が渡された。免許とはいっても、生年月日と顔写真、人物の性癖や備考なども記された、簡単なプロフィールカードとなっている。
 いくら常春とはいえども、自分の免許を人前で出したりはしない。今でも殺人鬼を恐れている人間は多い。この大多数が集まる電車の中では、すぐにパニック状態になるだろう。それもまたつまらないことではないが、今はそんな気分ではなかった。
 やがて電車は常春の降りる駅に到着する。今日は一人ぐらい殺しておこうか、それとも今日は殺さずに明日にしようか。駅の改札を通り、駅前の商店街へと抜ける。商店街を抜ければ、すぐに自宅が見えてくる。それまで誰か殺すかどうかは、常春も解らない。
「あの、殺人鬼の方ですよね?」
 八百屋の辺りに差し掛かったところで、そのように声をかけられた。声の方向を振り向くと、そこには三十代半ばほどの女性が立っていた。常春は辺りを見渡す。周囲に目立った人ごみはいない、立ち止まって話しても不審がられることは無いだろう。傍から見れば、他愛の無い世間話をしているようにしか見えないはずだ。
「そうですけども……何か御用ですか?」
 微笑みながら常春は答える。ポケットの中のナイフに手を伸ばす。最近使っていないナイフに手を伸ばす。レザーの柄の感触と、刀身の冷え冷えとした刀身の気配。
「私は、夫を殺人鬼に殺された物です」
「はあ」
 それがどうしたというか、常春はため息をついた。殺人鬼が人を殺して何が悪いのか。普通のことだ。
「何故、貴方たちは人を殺すのですか? 何故夫を殺したのですか?」
 常春は一瞬考えるような素振をした。相手の愚かさに、気味の悪い微笑が浮かんでくる。
「それはですね、奥さん、殺人鬼の誰も知らないと思いますよ」
 相手の顔が驚きに変わる。そのまま咎めるような表情に変わり、その顔と口調で言葉が漏れていく。
「じゃあ――どうして人を殺したりするんですか? 夫は何故死ななければいけなかったんですか? 夫以外にも、死ぬべき人はいるんじゃないですか?」
 夫人の気迫に、常春も一瞬たじろいだ。だが、それだけだった。
「貴方がそう思うのは当然です。人の死は誰にも予期できません。貴方のご主人がどのような人物だったのかはわかりませんが、きっと貴方にとってはよき夫だったのでしょう。ですが、死は平等です。良い人も悪い人もいずれ果てます。貴方の周りに良い人が少なかったのか、貴方の周りに悪い人が多かったのか、そのどちらかだったんでしょう。人は良い人の死を悼み悪い人の死を喜びます。人間とはそういうものです。貴方のご主人が亡くなったことは悲しいことです。でも、どうしようもないことです。人の死を止める力は、人間にも殺人鬼にもありません。酷い言い方になりますが、『運が悪かった』ということです』
「運……」
「そう、運です。不幸とか幸運とかそういった程度の話じゃありません。人生の中にある無数の地雷を、避けて通るか踏んでしまうかということです。助かることもあれば、即死してしまうこともあるでしょう。ご主人は運の悪いことに、今回は即死する地雷を踏んでしまったのです。そして地雷が殺人鬼だったのです。運が悪かったですね。では、ご主人の魂が報われるよう願っています」
 相手が二の句を継ごうとしていたが、常春は、どこかぼんやりと何の気も無しにポケットからナイフを取り出していた。
「でもあんたも死ね」
 一瞬の間があってから、ナイフが作った風が流れた。女性の首から上が綺麗に吹き飛ばされ、八百屋のトマトの中に突っ込んでトマトと血が入り混じった巨大トマトが完成する。首の切断面と胴体の切断面から、血が交差するようにあふれだす。辺りから悲鳴が上がるが、常春はナイフの血を路上に払い歩き出す。
 今自分が殺した相手の顔も、もう思い出せなかった。

常春編――了
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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