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少色適当なことを適当に書きます。
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ホーム・コーヒーショップ
 この小説は、twitter上で、http://twitter.com/syousiki/status/14838790632このPostが2favhttp://favotter.net/status.php?id=14838790632だったうえ、かさだんごさん(@ksdng)に@まで飛ばして書いてといわれたので、調子に乗って書いてみたものである。
 大体9000字くらい。一週間くらいで書いたので出来は期待しないでください。
 本文は追記にあります。
 その他:参考の創作メモなども。
 http://twitpic.com/1udf22 

 http://twitpic.com/1udikh
 4/27追記
 @yamanokuさんが挿絵を書いて下さいました!! どの場面かは読んでみてからのお楽しみとなっております!!!!
 

 その日も、俺は行きつけのコーヒーショップ"Blue Days"に足を向けた。ここ何年かは、毎朝ここに通っている。俺が住むアパートから、歩いて十分かそこらのところにある、さほど新しくない店だ。
"Opened"の札が下がっていることを確認し、押し開きの扉を開けて店内に入る。時刻は昼前だったが、客はほとんどいなかった。さほど広い店ではないとはいえ、暇を持て余しているのであろう老婆が二人いるだけで、あとはすべて空席だ。
「おはよう、翔太。今日は遅いね」
「あー、昨日飲み会だったんだよ」
 俺に声をかけてきたのは、この店を一人で経営する涼子という女だ。この涼子とは、なんだかんだと、この世に生を受けてからずっとのつき合いになる。
「コーヒー一つな。あとハニートースト」
 俺の注文はいつもと同じ。目覚めて最初に口にするものとして、いろいろとメニューを試したみた結果、これに落ち着いた。
「それ、モーニングメニューなんですけど。もうお昼なんですけどー?」
「いいだろ、別に他に客いないし。くることもないだろうし」
 そうかもしれないけどー、と不満を言いつつも、涼子はカウンターから厨房に引っ込んでいった。ケチをつけながらも、毎回オーダー通りに持ってきてくれるのだから可愛い。
 俺はいつも通り、窓際の四人掛けの席に座った。鞄から、仕事道具のポメラとipodをを取り出す。この前斡旋して貰った、議事録作りのアルバイトだ。締め切りは明後日の月曜日なので、少々忙しい。
 イヤホンを耳に押し込み、再生、打ち込みを始めたところで、涼子がコーヒーとトーストを持ってきた。一時停止し、イヤホンを耳から外す。
「はいお待たせ。バイト残ってるのにお酒飲んだの?」
「仕方ないだろ、バイト回して貰ったところの人たちなんだよ」
 涼子はトレーからコーヒーとトーストを俺のテーブルに置くと、そのまま俺の斜め向かいの席に座った。他に何もする事がないくらいには暇らしい。
 俺はポメラを脇によけると、コーヒーを口に運ぶ。朝飲むコーヒーとしては、Blue Daysの、涼子の淹れるコーヒーが一番好きだ。なぜなら、
「どう?」と涼子が尋ねてくる。
「いつも通りマズい」
 なぜなら滅茶苦茶にマズいからだ。水が悪いのか、豆の挽き方が悪いのか、専門外である俺はさっぱり分からないが、とにかくマズい。酸味が強すぎたり苦みが強すぎたりして、いろいろ試行錯誤しているのは分かるのだが、それがことごとく失敗しているのだ。お陰でばっちりすぎるほどに目がさえる。
「あ、トーストは相変わらずウマいぞ」
 涼子がいつもよりショックを受けているようだったので、慌ててフォローする。コーヒーを淹れるのはさっぱいだが、こういった軽食や甘いものはとにかく得意だ。
「そんなに美味しくないなら、無理して飲まなくても・・・・・・」
「そうへこむなよ。トーストに合うぞ」
 コーヒーがマズいにも関わらず、たまに人が来るのは、ここの軽食がそれなりの味だからに他ならない。セットのコーヒーは誰も頼まないが。
 トーストを食べ終え、コーヒーを飲み干し、俺は涼子に向かって言う。
「しかしだな、お前少しは俺に感謝しろよ。ここのマズいコーヒー飲むのは、俺ぐらいなもんだぞ?」
「そうだよねー、ありがと、翔太」
 そういって、涼子は俺に向かって微笑みかけた。
 ◆       ◆
 結局夕方までBlue daysで過ごし、さっぱりバイトが進まないまま、店を後にした。夕映えの空を眺めつつ、ipodの電源を淹れる。流れ出したのは、チキン・ブレイブ・ハートの"フライ"だった。
 大きくため息をつきつつ、家路を急ぐ。歩いて十五分かそこらといったところだ。
 涼子は、本当に俺のこと何とも思ってないのだろうか。というか、俺が惚れてるということに、本当に気づいてないのだろうか。確かに生まれてこの方ずっと一緒にいるから、向こうは全く意識してないのかもしれない。ところが俺の方ときたら、物心ついた頃から、涼子のことを意識しまくっていた。涼子以外の女とはできる限り話さないようにしていたし、涼子が俺以外の男と会話しているのを見かけた時は男をぶち殺したいと拳を握りしめた。中学のクラスメイトは少なくとも全員俺が涼子に惚れていること知っていただろうし、高校の頃は進路別にクラス分けがされたときでさえ暇さえあれば涼子のいる教室にいたのだから、下手したら学年一帯に知れ渡っていた可能性もある。それでも涼子は気づいてないのか。仮に涼子が俺のことを何とも思っていないにしても、涼子にこれまで恋人がいたのかといえば絶対にないと、四六時中涼子の側にいた俺が断言してもいい。
 悶々としながら歩いていると、後ろから来た自転車にベルを鳴らされた。二人乗りのカップルだったので、道を譲った後、背後から怨念を目一杯に送り込んでやった。できるだけ悲惨な別れ方をするがいい。
 ipodが三曲目のチキン・ブレイブ・ハートを俺の耳に送り込み始めた頃には住んでいるアパートについた。二階建ての学生用アパートで、今年の春にほぼ全室が埋まってしまい、俺の部屋は二階の角部屋なのでいくらかはマシとはいえ、非常に騒々しい。男と女の声が混じって聞こえてくると毎度毎度怒鳴りつけたくなる。
 部屋に入って、電気をつけてパソコンの電源を入れて、服を着替えてバイトの続きをする。今日はほとんど進まなかったのだから、少し気合いを入れてやらなければいかんだろう。どこかの大学の有名な教授とやらが、動物の繁殖活動に関してしゃべりだした。
 ◆       ◆
 結局、週末の残りいっぱいかけてバイトは終わった。完成した議事録のファイルをメールに添付送信して作業終了。
 時計の針は八時を指していた。立ち上がりカーテンを開けると、外の眩しさに目が眩んだ。午前七時らしい。このままいったん寝ても良い気はしたが、さほど疲労も眠気も感じない。なによりも、涼子のコーヒーがのみたい気分だった。手っとり早くシャワーだけ浴びて、Blue daysにいくことにしよう。
 ◆       ◆
 Blue daysは朝は八時四十五分頃には開くのだが、俺が九時についたにも関わらず店は開いていなかった。準備中なのかと窓から中をのぞき込んでみるが、人の気配はしない。
 裏口に回ってみたが、涼子がここまで来るのに使っている自転車も無かった。今日は定休日でもないし、涼子に何かあったのか。
 すぐさま携帯を取り出し、涼子に電話してみる。なかなか応答が無かったが、十数コール目で涼子が電話に出た。「もしもし?」
「あ、おはよー、翔太・・・・・・ごめんね、ちょっと風邪気味っぽいから、今日はお店お休みにするから」
 そりゃお大事に、といってから、すぐに別なアイディアが浮かんだ。
「なんか、必要なものあるか? なんなら、買っていくけど」
「え? いいよ悪いし。風邪移るとあれだし」
「馬鹿は風邪ひかないから大丈夫だっての。なんか、食い物と風邪薬でも買っていくけどいいか?」
 俺がそういうと、電話の向こうであー、うーん、と唸り声が聞こえてから、「じゃー、お願いする」と返ってきた。涼子がぽつぽつと欲しい物を告げてくるのをメモし、電話を切る。
 電話を切った俺、は心の中で叫び声をあげた。涼子の家に行くのは久しぶりだ。向こうも今は一人暮らしだが、俺のアパートとは反対方向のため、なかなか行く機会がないのだ。
 誓って言うが、これは涼子のことが心配であるからの行動であり、決して、下心があるわけではない。
 ◆       ◆
 涼子の住むアパートは、女子専用と銘打たれているだけあって、俺のアパートとは違って、外観も綺麗で、なにやら作りも洒落込んでいた。第一周りに男がいないのだから、俺の存在自体が浮いていた。
 つい建物の前で立ち尽くしてしまったが、こんなことをしていたらよけいに怪しい人物に見えるに違いない。さっさと涼子の部屋に行こう。確か、三階だったか。
 備え付きのインターホンを鳴らすと、何秒かの時間差があってから、扉が開いた。
「あれー・・・・・・翔太? なんで翔太がいるの?」
「いや、お見舞い」
 わりとひどい風邪のようだ。玄関口に買ってきた荷物を置いて、涼子の額に手を当てる。結構な熱だ。
「熱あるだろ。測ったのか?」
「今朝は、三十五度ぐらいーうーん」
「あ、おいおい」
 玄関で座り込みそうになる涼子を慌てて抱える。全身が熱い。なにが三十五度だ。四十度近くあってもおかしくないんじゃないのか。
「体温計どこだ? 測ってみろよ」
 何とか涼子をベッドに寝かせて、そう尋ねる。涼子はテーブルの上を指さしてきた。水銀式の体温計がケースに半分入れられている。朝測ってみたというのは本当らしい。「ほら。もう一回測ってみろよ」
「うん」
 涼子に体温計を渡す。涼子が布団の中でもぞもぞと体温計を挟もうとして、パジャマのボタンを開け始めたので、俺は慌てて目を反らした。
 布団が擦れる音がしなくなってから、涼子の方に向きなおる。ベッドに横になった涼子が、潤んだ目で俺を見上げてくる。耐えきれなくなって顔を反らし、別なことを聞く。
「な、なんか食べたのか? 食べてないなら、何か適当に作るか?」
「んー、じゃあ桃缶食べたい」
 なるほど、それでさっき買って来るものの中に入ってたのか。
 玄関に起きっぱなしだった買い物袋に戻り、中から缶詰を取り出す。涼子は白桃の方が好みだ。台所から缶切りを探しだし、缶を開けて、少し考えたが、箸ではなくフォークを取って部屋に戻った。
 涼子はベッドから身を起こし、焦点の定まらない目で俺が部屋に戻ってくるのを見ていた。
「ほら。桃缶。開けてきといてやったぞ」
 缶を涼子に手渡す。涼子はゆったりと手を伸ばして、缶を受け取ろうとしたが、手が震えて、うまく缶を受け取れない。
「翔太ー・・・・・・食べさせてー・・・・・・」
 絶句した。
 俺を殺す気なのかこいつ。
 何で今日はこんな可愛いんだよこいつ。
「・・・・・・おう」
 落ち着くべきだ。狙ってやってるはずがない。まさか涼子が狙ってこんなことを言ってくるはずがない。落ち着け。慌てるような事態じゃない。
 「食べさせて」

 缶の中でフォークで桃を半分に割り、刺して涼子に向ける。涼子が小さく口を開いて、桃にかじりついた。もそもそと口を動かし、飲み込んでいく。一口、二口、三口食べたところで、
「美味しい」
 と、呟いた。
「そりゃお前、桃缶がマズい訳がないだろ」
 俺はそう返すのが精一杯だった。可愛すぎるだろこいつ。
「体温計、そろそろいいんじゃないのか?」
 必死で話を逸らそうとする。これはまずい。涼子が可愛すぎる。このままでは俺がどうにかなりそうだ。
「取ってー」
「は?」
「体温計、取ってー」
 俺は死んだ。
 言葉は失い、頭が真っ白になる。
「馬鹿いってんじゃねーよ、自分で取れ」
 涼子がもぞもぞと挟んでいた体温計を取り、俺に渡してくる。俺の方はというと、まともな思考ができず、そこに出ていた体温もまともに確認せずに水銀を戻し、ケースにしまう。そして、涼子に別な桃缶を食べさせる。
 桃缶を半分ほど食べると、涼子は落ち着いてきたのか、横になって寝息をたて始めた。おかげで俺の方はさっぱり落ち着かない。
 食べかけの桃缶をタッパーに移し、買ってきた栄養ドリンクやらを冷蔵庫に移した。
 時計が昼前を指していたので、気を落ち着かせるためにお粥を作る。涼子が起きる気配がないので、後から火を通せるように八分目ほどまでにとどめておく。
 お粥を作り終えて部屋に戻ると、涼子は変わらず寝たままだった。寝顔をのぞき込む。昔から変わらない、俺の好きな女の顔。伏せられた瞼、睫、上気した、涼子の顔。
「・・・・・・ショウ」
 近づけていた顔を思わずよけた。というか、体が無意識に反応した。
 うわっ、これは、これはやばい。心拍数が一挙に跳ね上がるのが分かる。顔が真っ赤になっていく。頭に血が上って、思考が混濁していく。体中から汗が噴き出してくる。
「じゃ、じゃあ俺帰るからな! お大事にな! 早く治せよ!」
 そう捨て台詞を吐いて、俺は涼子の部屋を後にした。鍵をかけてポストに押し込むと、逃げるように家に帰った。
 ◆       ◆
 家に帰って、服を脱ぎ捨て布団の中に頭から入り、枕に連続で頭突きをかまし、腹の底から唸り声をあげて、頭をぼりぼりとかきむしった。
 涼子の奴なにを考えているんだ。なんで、なんであのタイミングで俺を昔のあだ名で呼ぶんだ。破壊力がありすぎる。ふざけてるのか。無意識だったのか。寝言だったのか。どうしてだ。どういことだ。そんなに俺を苦しめたいのか。どうなってるんだこの世界は。
 ベタベタな、小さい頃に結婚の約束をしたとかそういうことは全くない。でも、昔から一緒だったのだ。向こうがどう思っていようと。それを何で昔を思い出させるようなことを言うんだ。涼子が、一番俺の側にいたあの頃を。
「ショウ」「リョウ」と呼びあっていたのは、小四くらいまでだったか。何でもかんでも男女別になり始めた頃で、当時の男担任も、俺と涼子がいつも一緒にいるのをやたらと気にかけていたような節があった。それ以降は何となく名前で呼びあうようになった気がする。
 今思い起こせばあの担任は俺と涼子を舐めていたような気がしてならない。俺とリョウは生まれた月も、病院も同じ、家は同じマンションの隣室同士、保育園もずっと一緒で、生まれた時からずっと一緒だったといっても過言ではない。それをあの担任が分かってるはずがない。今会ったらいくら殴っても殴りたりない。
 昔のことを思い出していくと、今日のことが思い出されて、ますます体が熱くなってくる。涼子の方は今頃気分よく寝ているだろうし、惚れているのは俺の方なのになんでこんな思いをさせられなければいけないんだ。
 第一、せっかくの機会だったんだから、涼子が寝ているうちにキスでも何でもしてくればよかっただろうが。意識朦朧としているうちに押し倒せば良かっただろうが。馬鹿か。俺は馬鹿なのか。それくらいの度胸はないのか。もっと押す気がないのか。なにをやっているんだ俺は。
 俺はもう一度枕に頭突きをかました。チャックの金具に思いっきりこすりつけて、少し血が出た。
 ◆       ◆
 無理矢理眠りについたせいで、目が覚めた後も、起きあがるまでに相当の気力を要した。目が開いても、頭を動かすことができず、時間を確認することができない。暑くて布団を避けようよしても、体が動かない。腕が下になってしびれているが、力が入らない。
 結局、布団からでたとき、外は明るくなっていた。昨日家についたのは昼頃だったはずだから、かれこれ十二時間以上寝ていたということになる。
 涼子の呟きが耳から離れない。パソコンの電源を入れて、iTunesを起動し、音楽をかける。チキン・ブレイブ・ハートが歌い出す。"ベイビー・ユー"の歌詞で、不覚にも泣きそうになる。こらえて目を閉じて上を向くが、そのせいで涙がこぼれた。一曲終わるまでの間、ずっとそのままだった。
 三分ほど涙を流し続けてから、ようやく行動する気が起きてきた。昨夜脱ぎ散らかした服を拾い上げ、まとめて洗濯機にたたき込み、シャワーを浴びる。昨日の出来事をできるだけ流そうと努める。
 髪を乾かし、服を着替えたところで呼び鈴がなり、その場で軽く飛び跳ねてしまった。まさか、涼子がきたのか? 呼び鈴が再び鳴る。普段なら何の連絡も無しに誰かが着た場合は無視することにしているのだが、そんな余裕も無かった。玄関に走り、鍵を外して扉を開ける。
「うぃーす。生きてるかー?」
 涼子ではなかった。
 高校の頃の同級生である島野だ。
「お前かよ・・・・・・」
 全身から力が抜ける。涼子とばかり一緒にいた俺にとって、高校の頃に数少ない男友達といえば、この島野と、他に一人二人といったところなのだ。
「何だよおめーその反応。せっかく心配しにきてやったのによー」
「お前に心配される筋合いはない」
 俺はそういって、島野を閉め出そうと扉に手をかけた。「おいこらちょっと待てっつーの。ブルデにこねーもんだから変だと思って来てやったってのになにしてくれんだよ」
 手が止まる。Blue daysは今日は開いてたのか。
「・・・・・・まあ、上がれよ」
「よし来た」
 仕方なく、俺は島野を家に上げた。涼子の様子を聞きたかった。お湯を沸かして、インスタントコーヒーを二つ用意する。部屋にすっかり鎮座した島野に、コーヒーを渡す。
「おう、コーヒーか。助かるわー、口直しになる」
「何であそこでコーヒー頼むんだよ。馬鹿か」
「お前にいわれたくねーよさすがに」
 河野はそういうと、熱いはずのコーヒーを一気に飲む。どういう神経をしているんだこいつは。
「あー・・・・・・涼子の様子、どうだった?」
「んー、なんか風邪気味っぽかった感じ? マスクしてたし」
 やっぱり、まだ本調子じゃないのか。昨日あれだけの様子だったのだから、今日明日ですぐに回復するはずがない。しかし、マスクをしている涼子か。
「つーか何? 何でお前が俺に涼子ちゃんの様子を聞くわけ? 普通はお前の方が涼子ちゃんに詳しいと思うんだけど」
 痛いところをつかれた。島野の奴、勉強はろくにできなかったくせに、こういうところで鋭いから嫌だ。
「涼子もちゃんもなかなか店に来ないって文句いってたぞー。何で行かんの?」
 俺は思わず床を叩いた。誰のせいで俺が今こんな状態に鳴ってると思ってんだ涼子の奴。
「さ・て・は、なんかあったな? ようやっと関係進展か? ほれほれ、吐いてしまえ吐いてしまえ」
 俺は黙殺しようとコーヒーを口に含む。一口飲んでみて、やはり何か物足りない。カップから口を放す。コーヒーカップを机に置くと、自然と、口が昨日のことを話していた。
 一通り昨日の顛末を話すと、島野は腹を抱えて笑いだした。
「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、最高、お前最高。涼子ちゃんマジえぐい。生殺しの神になれるわ」
「笑ってんじゃねーよこっちは死にそうなんだっつーの」 こいつに話したのがそもそもの間違いだったか。
「いやー、久しぶりに爆笑したわ。おもれーなー、お前と涼子ちゃんは」
「別にお前を笑わせるためにやってる訳じゃないんだが」「いやー分かってるけどよ、すげーな」
 島野はそういうと、残っていたコーヒーを飲み干して立ち上がった。
「さて、何でお前が引きこもってたのかも分かったし、そんじゃあそろそろお暇しようかね。ブルデ、行けよ。涼子ちゃんも心配してたかんなー」
「おいちょっと待て、どういうことだ、それ」
 何で俺が涼子に心配されなきゃいけないんだ。
 問いつめようにも、島野の奴はさっさと外に出ていき、俺の疑問は宙に消えた。
 カップの中のコーヒーは、すっかり冷めていた。
 しかし、何しに来たんだ、あいつは。
 ◆       ◆
 どうにも気は進まなかったが、俺はBlue daysに足を向けた。正直、普通に涼子に接する自信が無いし、何かの弾みで愛してる、くらいは言いかねない。
 そこまで考えて、道中ふと、足が止まった。なんで、そもそも今まで俺は何も言わなかったんだ? 涼子に近づこうとする男がいれば、ひっそりとそれを邪魔してまでいて、なんで俺は涼子に告白も何もしなかったんだ?
 ――多分、無意識のうちに、涼子が自分のものだと思いこんでいたからだろう。俺は涼子以外には目もくれなかったし、涼子に近づく男は俺が恫喝していたし、あの頃から今まで、ずっと変わっていないから、何もしなくても、ずっとこのままの時間が続くような気がしているだけだ。
 だがそれは、小四の頃から狂った歯車がそのまま周り続けていたようなものだ。なら、あの時より前に戻ればいいってことだ。涼子を、俺だけのものにしよう。完全に吹っ切れた。正面から行こう。また、涼子のことを、リョウと呼べるように。自分勝手なエゴだろうが、それは関係ない。好きでも愛してるでも結婚しようでも、涼子の顔を見て、最初に出てきた言葉を、そのまま言おう。
 Blue daysにつく。いったん深呼吸してから、店のドアを開く。店内BGMのチキン・ブレイブ・ハートのデビューシングル、"チキン・ブレイブ・ハート"が俺を出迎えた。「おはよう、翔太」
「おう、コーヒーと、ハニートーストな」
 いつも通りだった。俺は窓際の四人掛けの席に座る。
 この期に及んで、何をびびってんだ俺は。三分前に考えてたことも実行できないのか。お誂え向きに、店内は誰もいなかった。正真正銘、俺と涼子の二人っきりだ。
 五分だか五年だかくらいして、涼子がコーヒーとハニートーストを持って来た。俺の前にトレーを置くと、いつもと同じ斜め前ではなく、俺の隣の椅子に座った。な、な、なんだよ急に。
 俺は落ち着こうと、コーヒーに手を伸ばす。手が震えていた。取っ手に手が触れたところで、涼子が「わたし、翔太のことが好きなのかも」といった。てがとまった。ふるえすらおこらない。
「さっきね、島野くんが来てたの。それで、昨日のこと話したら、思いっきり笑われて。昨日は、来てくれてありがとね。それでね、あの後、目が覚めたら、翔太がいなくて、それで、すっごく寂しくて、翔太が側にいないのが、すっごく不安になってきて、お粥もすっごくおいしくて、わたし、翔太がいなかったらどうしようって」
 ことばがでなかった。
 りょうこのことばがすべておれのこころをこなごなにふんさいした。あとしまのあとでころす。
「ねえ、翔太。ずっと一緒にいて。ずっと、わたしの側にいて」
 げんかいすぎる。
 てんないにちんもくがおりる。
 さんぷんだかさんじかんだかたったところで、ようやく、おれの歯が音をたてた。思考が、ようやく、戻ってくる。
 言われてしまった。俺が先に言おうと思っていたのに、涼子に、先に言われてしまった。
「・・・・・・・・・・・・じゃあ、涼子、条件、つけてもいいか」
 震えそうになる声で、何とか絞り出す。涼子が、俺のほうを向いて、首を傾げた。
「俺のこと、ショウって呼んでくれ。俺も、リョウって呼ぶ」
 それを聞いて、涼子は、ぽかんとした表情をしてから、顔を綻ばせ、「ショウ」とささやくように言った。俺の心臓は、とっくに粉々なっていた。
「リョウ、好きだ」
 枯れそうな声で、俺はリョウに答えた。
 fin
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