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木崎任、病院にて③+あとがきという名のいいわけ
執筆時期:2008年ごろ
五章:大晦日の告白というのは日本的だがロマンティックではない。止まらないわけではない。
六章:そして終わりはやってくる
あとがきという名のいいわけ


 結乃ちゃんと俺は、部屋で大晦日の代名詞、紅白歌合戦を見ていた。結乃ちゃんがお笑いとか格闘技とかに全く興味が無くて助かった。結乃ちゃんも俺も最近の音楽はよくわからなかったので、二人して歌手やら曲やらの文句をつけるのが仕事になっていけど。
 紅白ともに大トリが歌い終え、結果の集計が始まったところで、結乃ちゃんが俺に話しかけてきた。
「木崎さんは、どっちが勝つと思います?」
「個人的には赤かな。今年のメンバーかなり豪勢だったし」
 俺はいいつつ、伏せていた参考書を手に取る。年が明ければ、すぐにセンター試験だ。
「今年も……終わっちゃいますね」
 結乃ちゃんが、テレビ画面を見ながらぽつりと呟いた。俺が目を向けると、結乃ちゃんの視線とぶつかった。雪白の肌が、テレビの光を受けて青白く反射していた。
「そしたら……木崎さんと、勉強、できなくなりますね」
「……そうだね」
 俺は来年の正月三が日を過ぎたら退院する。そしたら、もう勉強漬けで、しばらくこの病院にはこれなくなるだろう。そしたら――結乃ちゃんに勉強を教えることは、もう、できない。
「短い間でしたけど……ありがとうございました」
 そういって、深々と頭を下げてくる結乃ちゃん。いや、こっちが申し訳なくなる。
「来年からは……一人でも、がんばりますね」
 悲しそうな笑顔を浮かべる結乃ちゃんに、俺の心が揺らぐ。
 結乃ちゃんと一緒にいたい。
 退院しないで、ずっと結乃ちゃんと過ごしたい。
「来年も……一緒にいられたら、いいのにね」
 俺が思わず呟くと、結乃ちゃんは少し驚いたような表情をしていた。
「……そうですね……」
 うつむき加減でこぼれた結乃ちゃんの言葉。
 その言葉に応えるべく、俺は、結乃ちゃんの手に自分の手を重ねた。結乃ちゃんの手が一瞬震える。
「結乃ちゃん、あのさ」
 俺は声を絞り出した。結乃ちゃんの顔が上がり、こちらを向く。
「俺、結乃ちゃんのことが好きだ」
 言った。
 一瞬の間。
 心臓の音が今死にそうなほどに速い。
 結乃ちゃんの頬が見る間に朱に染まっていく。俺の方も、顔がどれだけ赤くなっているかわからないくらいに顔が熱い。
「……わ」
 結乃ちゃんの口が開いた。
「わたしも、木崎さんのこと……好きです」
 言い終わった直後、結乃ちゃんの顔がますます赤くなっていく。色白の結乃ちゃんだけに、暗い中でもよくわかった。
「ありがとうね……結乃ちゃん」
 重ねていた手を握ると、結乃ちゃんも握り返してくれた。

◆       ◆

 俺が退院して一週間かそこらして、俺が生活の全てを勉強に注ぎ込み始めた頃のことである。携帯に病院からメールが来た。送り主は、俺の担当医だったあの看護師さんだった。いつの間にかアドレスを調べられ、しかも向こうのアドレスも登録されてあった。マメな人だ。
『結乃ちゃんが木崎さんに会いたいですって。暇だったら来て見ない?』
 ちくしょう、そんなこといわれたら行くしかないだろうが。その日は日程的にどうしてもこなしておかないといけない問題集があったので、次の日に行くように返信しておいた。向こうも暇なようで、すぐに返信が来た。
『できるだけ早くね』。俺を一体なんだと思っているんだろう。
 ◇
 そういうわけで翌日である。俺は満を持して、というわけではないが、重要単語帳を携えながら結乃ちゃんの待つ病院に向かった。
 タクシーを使って病院につくと、特に考えることなく俺が元いた部屋に向かうところだったが、踏みとどまった。いや、結構体に染み付いているもんだ。少し辺りを探して、俺にメールをよこした看護師さんを見つけ出す。看護師さんは売店でパンを買っていた。
「遅いです」
 開口一番の台詞がそれだった。いやせっかく来たのになんなんですか貴方。
 看護師さんは辺りを落ちつきなく見回すと、俺にもったいぶって耳打ちしてきた。「あとで屋上に来てください」と。俺が聞いたこともないような深刻な声で。
 何か嫌な予感がした。
 
 俺は真っ直ぐ屋上に行った。何もすることはないし、看護師という職業の人がああいった深刻な声を聞かせられたことは、どう考えても非常事態であることの証だ。……今思えば、顔色も少し悪かった様な気もする。
 ああ、よく分からないけど煙草吸ってみたい。たぶん、禁煙している人はこんな気分なんだろう。無性にいらいらして、むしゃくしゃする。
 十二時を少しまわったところで、屋上の扉が開いて、看護師さんが来た。白衣の上にカーディガンを羽織っていた。向こうは俺の顔を見ると、少し顔を伏せた。
 俺はベンチから立ち上がった。
「今、忙しいから簡単にいうけど」
 俺は息を呑んだ。ある程度は予測していた。
「結乃ちゃん、危ないかもしれない」
 予想できていたはずの言葉が、あっさりと俺の精神を押しつぶした。視界がふらつく。ベンチに倒れそうになる。
「昨日の夕方頃から発作が始まって、今日の朝頃までには意識不明の状態。昨日、木崎さんにメールてすぐくらい」
 思わず走り出そうとした俺を、看護師さんが後ろから押さえ込んだ。無理矢理振り切ろうとしても、向こうも想像以上の力で押さえ込まれてしまう。
「貴方が行ってどうなるんですか! 少しは結乃ちゃんを信じてあげてください! 貴方も、すぐにセンターじゃないですか!」
「納得できるわけねえだろそんなこと!」
 今の俺にとっては、結乃ちゃんが全てだ。結乃ちゃんがいたからこそ、今の今までやってこれたし、勉強も順調にやってこれた。今の俺が、結乃ちゃんなしで生きていけるわけが無い。
 俺がそう叫んだところで、看護師さんが俺を硬いコンクリートの床に思いっきり転がした。膝に響き、俺は呻きながらうずくまる。看護師さんを睨みあげると、看護師さんは俺の前にしゃがみこんできた。
「……頭冷えた?」
「……はい」
「結乃ちゃんだってつらいんですよ? 木崎さんが来るの楽しみにしてたんですよ? わかります?」
 俺は反論することができなかった。
 看護師さんは、俺を否応なしにベンチに座らせ、昨日の夕方からの話をし始めた。昨日の夕方、結乃ちゃんは夕飯前に急に胸を押さえて苦しみだし、発作が始まった。予感を察知した看護師さんと主治医の先生は、即座に家族に連絡、保存治療に入ったという。保存治療は、少しでも延命をしようという治療だ。いつまでも長い間の保存ではなくて、短期間――すぐに死んでしまうから、少し先延ばしするだけの話だ。
「……結乃ちゃんに会わせてくれ」
 俺の言葉に、看護師さんが怪訝な顔をする。多分、結乃ちゃんの病室には両親も、結乃ちゃんの兄もいるのだろう。そんなことは構わなかった。ただ、結乃ちゃんと会いたかった。
「結乃ちゃんの顔を、見てから帰る」
「……わかりました。好きにしてください」
 さすがの看護師さんも呆れたのか、俺に背を向けて去っていった。確か、仕事が忙しいとかういっていたっけか。多分、結乃ちゃんのことで仕事が増えているんだろう。
 俺も看護師さんの後を追うようにして屋上から降りた。脚は自然と結乃ちゃんの病室に向かっていた。
 ◇
 軽くノックしてから結乃ちゃんの部屋に入ると。結乃ちゃんの周りに両親らしき男の人と女の人、さらに、結乃ちゃんの兄がいた。兄のほうは俺に気づいたらしく、俺をそちらに呼び寄せた。
「父さん、母さん、その人――結乃の『先生』」
 先生とな。俺は頭を下げた。向こうも、不審そうな表情は隠しているようだったが、僅かに返礼してくれた。なんだか、申し訳なかった。
「『先生』なんていうもんですから。もっとご年配の方かと思っていました」
 母親が言った。どうやらある程度は俺のことが向こうに伝わっているようだ。
「……最近の結乃は、とても調子が良かったのです」
 父親が話し始めた。俺はまだ、結乃ちゃんの姿を見れずに居た。
「『先生』ができたと聞いたときは、本当に驚きました。結乃は今まで学校に行ったことなんて無かったものですから。字の読み書きくらいは私が教えてやりましたが、中学の勉強なぞは、教えてやることができませんでした。そんな結乃が、勉強を始めたと聞いて――本当に嬉しかったんです。ありがとうございました」
 今度は、深々と頭を下げられてしまった。「そんな」と俺は慌てて弁解する。
「そんな、俺なんかじゃなくて、結乃ちゃんが頑張ったからです。俺は、そんな、何もしてないです」
「でも、貴方は結乃の恋人だった」
 俺は雷に当てられたようなように凍りついた。いや――そんなにストレートにばれているとは思わなかった。
 母親が続ける。
「結乃のような気難しくて、扱いづらい子を、好きになってくれる人がいるなんて、思ってもおりませんでした。結乃にしても、誰かを好きになって、交際できるほど素直な子じゃなかったんです。本当に……」
「なあ、あんた」
 兄が深刻そうな顔を俺に向けた。その瞳に強さに、射抜かれそうになる。
「結乃と一緒にいてやってくれ」
 俺が問い返そうとする間もなく、兄は部屋から出て行った。それに続くように、父親も母親も、顔を見合わせた後、部屋をするすると抜けていく。いや、ちょっと待てよ。
 部屋の扉が閉められ、俺は完全に結乃ちゃんと取り残される。
 そこで俺は、初めて結乃ちゃんの姿を見た。
 目に付くのは、人工呼吸器と点滴。そして、死の間際とは思えないほどに美しい黒絹の髪、純絹の乳白色の肌。目は閉じられ、柔らかそうなまつ毛が緩やかに伸びている。
 俺は結乃ちゃんの脇の椅子に座った。いつもは、結乃ちゃんがいた位置に。
 結乃ちゃんは綺麗だった。死の間際なのに、というより、死の間際だからこそ美しいのかもしれない。
「結乃ちゃん……」
 名前を呼んでも、答えは返って来ない。保存治療の段階というのは、あくまで現状維持、死を先延ばしするだけの治療に過ぎない。俺の叔父さんのときもそうだった。
「起きて、くれ……」
 泣きそうな声が出た。
 こんなにも綺麗なのに。こんなにも可愛いのに。こんなにも好きなのに。こんなにも綺麗なのに。こんなにも可愛いのに。こんなにも好きなのに。
 震える手を伸ばし、結乃ちゃんに触れてみた。滑らかな肌の表面は少し汗ばんでいて、熱かった。紗の髪はいつもの結乃ちゃんの髪だった。
 ◇
 こちらが体を壊してしまう、と無理に言われ、俺は昼前辺りに病室から出され、代わりに母親がその場に残ることになった。パンだったか何かを食べた気がするが、ほとんど覚えていない。その後は、入れ替わりで母親と父親が家に帰った。人寄せの都合で家を片付けるのだという。
 病室には、俺と兄が残った。俺たちはただ座ったままで過ごしていたが、やがて、兄が口を開いた。
「……後二年待って欲しかったね」
「二年?」
 俺が言葉の意味を図り損ねていると、兄は言葉を続けた。
「後二年あれば、結婚できるじゃん」
「誰と」
「アンタと」
「……」
 そんな財力ないです。
「冗談だけどな」
 ……冗談に聞こえない。
「……実は、さ。結乃と俺の母親は違うんだよ」
 俺は耳を疑った。そして、兄の姿を上から下までまじまじと見た。特徴的な黒の美しい髪も、栗色の瞳も、顔の輪郭も、そっくりだっていうのに?
「二人とも父親似なんだよ。俺のほうが余計似てるけど」
 俺はまだ信じられなかった。初めて見たときからよく似た兄弟だと思っていたのに、異母兄妹とは信じられない。
「多分……さ。俺たちは、魂から似てるんだよ。だから、今の結乃の気持ちがよくわかるし、同じように苦しい」
 ……魂から。そういわれればそうかもしれない。二人の姿だけでなく、その雰囲気というか、気質というか――確かに、魂から似ている、というのは間違いないだろう。
「なあ、なんで結乃が死ぬんだろうなあ?」
 その問いは、誰にも向けられていなかった。自分にも、俺にも、天にも地にも。
 魂が似ているといっていた。自分が死んでいくような感覚。
「世の中、もっと他に死んでもいい奴がいるって、そう思わねえ?」
 それは確実に真理なのだろう。ローマ法王と日本の性犯罪者。どちらが重い命なのかなんていうのは、目に見えている。
 結乃ちゃんみたいな子が死んでしまうのは、不幸だ。
「あんたも、二年待てば結乃と結婚できたわけだよな」
「いや、そんな、結婚とか」
 意図的にか無意識にか、兄が話題を始めに戻した。無理無理、俺みたいなの。
「そうでもねえよ、あんたみたいな人は結乃に尽くしてくれそうなタイプだし。『先生』だろ?」
「それを言われると……」
 全く反論できない。
「だからなあ……結乃には平凡でもいいから、幸せになって欲しかったよ。あんたなら、大丈夫なのかと思ったんだけどな」
 兄はそういうと、天井を仰いだ。無機質な天井のみがあった。
 ◇
 気がつくと、朝になっていた。
 俺は結乃ちゃんのベッドに倒れこむようにして眠っていた。
「結局、朝までいたんですね……」
 後ろに看護師さんが立っていた。俺は慌てて立ち上げる。
「ほら、早く起きてください。もう一週間でセンターですよ。早く早く」
 なんだこの人。俺は時計を見た。時計に出ている日付からすると、二日間は寝ていたことになる。
 結乃ちゃんを見る。
「また明日ね、結乃ちゃん」
 柔らかい頬にそっとキスをすると、俺は部屋を出た。廊下から差し込む光は、明るく輝いていた。

◆       ◆

 たぶんすごく中途半端で、「あれ? これで終わり?」と思っている人が多いのでしょうけども、これで終わりです。一応この後の話も考えてありますけども、なんだかすごく嫌な話で、これくらいで爽やかに終わっておけばいいだろうという判断でここで終わらせました。なので、結乃がこれからどうなるのかとか木崎がこれからどうするのかとか、皆さんに考えてもらいたいと思います。
 あと、作中の病院の描写とかは適当です。私は恥ずかしいことに入院経験も骨折経験も無いので、骨折の痛みがどれくらいとか入院したらどれくらいで退院させられるのかとか、消灯時間とか全く考えてません。所謂考証不足です。ごめんなさい。
 そういえば、この小説の語り部で主人公である木崎任という人物は作中で一回もフルネームが出てきません。一人称の書き方だと否応なしにこういうことになり、ミステリーではそれが叙述トリックとかになっていたりするのですが、今回は別にそういうことはありません。いや別にタイトル通りに、これから本当に「木崎任」という人物を登場させることもできますがそういうことは無いですし、書かれていないだけで作中の語り部であり主人公の名前は木崎任なのです。
 もっと言えば、この小説でフルネームが出ているのは結乃一人ということになります。主人公は終始下の名前を呼ばれることはないし、結乃の家族はあくまで主人公の主観から書かれているため関係性のみを描写されているために名前が出てきていません。ちなみに名前は決めていません。
 では、ここまで読んでいただいてありがとうございました。
 機会があれば、また別な作品でお会いしましょう。
                                              少色
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テーマ:文学・小説 - ジャンル:小説・文学

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