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少色適当なことを適当に書きます。
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木崎任、病院にて②
執筆時期:2008年頃
一章と二章はこちら
三章:勉強を教える時は新たな発見があると自己を正当化する必要がある。
四章:ある晴れた日の午後の病院の屋上
[READ MORE]からどうぞ。


 その日の夜をきっかけに、俺たちはすぐにうち解けあった。……と思いたい。病室の場所を教えると、結乃ちゃんは毎日のようにやってきた。午前中いっぱいから午後いっぱいまで、世間話をして帰って行くだけ。俺か結乃ちゃんが検査のときはなし。まあそれで嫌ってこともないし、むしろ嬉しいくらいでもある。
 そんな日が続いていたある日の午後、結乃ちゃんがやけに大荷物を抱えてやってきた。いつもはてぶらか、点滴袋のスタンドだけなのに、今日は手提げ袋を持っていた。
「どうしたの? その荷物」
 ま、まさか……いや、何も思いつかないぞ。
「えっと、その、実は……」
 結乃ちゃんは手提げ袋の中からごそごそとノートを取り出した。何?
「木崎さん来年受験するから……頭いいんですよね? それ、勉強、教えてもらおうと思って」
 はあ、なるほど。俺は少し考える。結乃ちゃんに勉強を教える。俺は受験生で、そろそろセンター。とはいっても、去年は数点の差だったから、今年は確実にいけるだろう。この前の模試でも判定はAだったし、そんなに心配なこともない。
「駄目……ですか?」
 結乃ちゃんが困ったような顔で聞いてきた。
 うーん。
 結乃ちゃんみたいな子に頼まれるとなあ……。
「わたし……ずっと病院にいるんで、学校に行ったこともないし、友達もいないし……いつも退屈だったんです」
 ……ちょっと待て。俺ここで断ったら、超悪人系? 極悪人認定? 逆大司教?
「いつも、本読んで、点滴して、検査して、それの繰り返しで……」
 結乃ちゃんは語りモードに入っていた。
 そっか……だからか。
 結乃ちゃんは、世界から隔離されて生きているんだ。病院内以外の世界を知らない。だから純粋で、こんなに、綺麗なんだ。
「わかったよ」
「え?」
「教えたげるよ、勉強。どこから教えればいいの?」
 俺の言葉に、結乃ちゃんの顔が明るく輝いた。
 うん、やっぱ可愛い子は笑ってなくちゃね。
 ◇
 次の日から、俺は結乃ちゃんにかかりっきりになった。といっても、結乃ちゃんはかなりできるほうで、俺が教えた内容を見る見る吸収していった。やっぱ本を読んでいるだけのことはあるのか、小学校程度の内容はものともせず、本来の学年である中学校二年生の内容までたどり着いていた。
「うーん……こっちを二倍して……」
 結乃ちゃんは連立方程式に手間取っていた。俺も最初は苦労したからなあ。うん、少し練習すればなれるだろう。
 俺が教えてるのは数学と理科、社会ぐらいで、国語は教えていない。一度見せてもらったけども、結乃ちゃんの今まで読んだ本は俺とは比べ物にならないもので、国語なんて教える必要がないと勝手に判断。
 いや、でも悩んでいる結乃ちゃんも可愛いし、だがしかし疑問が氷解したときの結乃ちゃんの表情も真に麗しゅうて――。
「あ、わかった」
 ほいきた、俺の至福の瞬間。結乃ちゃんは流麗な字でノートにシャーペンを走らせていく。
「はいっ。できました」
 ノートを百八十度回し、俺に見せてくる。載せた問題は、俺が中学の頃自作した問題ノートのものなので、回答はほとんど暗記している。結乃ちゃんの視線を気にしながら、赤鉛筆――売店で買った――で丸をつけていく。問(1)正解、(2)正解、(3)正解、(4)正解――
「……全問正解」
 すげーこの子。いや、ほんの四日間で小学校の算数から中二の数学のほとんどを修了しちゃうしちゃうなんて凄すぎだろ……。やっぱ、ずっと本読んでたから、こういう理解力とか応用力とかもあるのか。文系でも理系でもいけそうだ。
「はい。いっつも通りの全問正解」
 結乃ちゃんはノートを受け取ると、自分の目でもう一度確認する。まあ、俺は理系だし、数学の丸つけは間違うことはないだろうけどね。
「……じゃあ、ください」
「……え」
 そんなことをいった結乃ちゃんは、俺が反応し損ねている間に、結乃ちゃんは目をつぶって、その薔薇のような口唇を突き出してきた。…………えっと、これは、その、アレですか。落ち着け! 静まれ俺の心臓! やめろよ結乃ちゃん。俺莫迦なんだぞ!?
 俺は――
「あう、うむ」
 結乃ちゃんの口に、糖分補給のドロップを押し込んであげた。柔らかい唇がちょっとだけ俺の指先に触れたけど、あんま気にしませんよ。いや気にするな。気にするな!
「……おいしい」
「でしょ? 食べ終わったら次ね」
 ……いや、俺のほうが休みたいくらいだ。 
◆       ◆
 その日はいつになく気持ちの良い日で、骨折の俺も少し屋上に出てみた。漫画なんかではベンチがあって物干し竿にシーツがかけてあったりするんだが、案外その通りなので驚いた。
 結乃ちゃんは今日は検査らしいので、俺の授業はお休みだった。結乃ちゃんの勉強している姿は俺にとっては最高の薬なのだけれども、そもそも俺は骨折なので薬なんて根本的に必要ないし、結乃ちゃんにも検査なら検査をしっかり受けて、正しい方法で治して欲しいところだ。
 誰も来る気配がないので、ベンチに横になって数学の参考書を読んでいると、屋上への扉を開けて看護師さんが入ってきた。どうやらシーツを取り込みに来たらしい。しかもよく見れば、俺の担当医に来てくれている人だった。
「こんちわっす」
「こんにちは」
 俺が挨拶すると、向こうも問題なく返してくれた。どうやら顔は覚えてもらえているらしい。
「結乃ちゃん、控え室で話題になってましたよ」
 俺は起きあがって参考書を閉じた。
「何でですか?」
 まさか、病状が悪化した、とか?
「最近の結乃ちゃん、すごく明るくなったねって。木崎さんのおかげですよ」
 へー。
 結乃ちゃんって、昔は明るくなかったのかな? そう思い、看護師さんに聞いてみた。
「明るくなったっていうか、刺々しかったんですよ。食事も残すし、話しかけてもお返事してくれなかったり。でも最近は、食事も全部食べるし、可愛いねっていうと、ありがとう、っていってくれるんですよ」
 俺はちょっと考えざるを得なかった。それはただ単に、結乃ちゃんが慣れてきて、色々と折り合いをつけてきたってことじゃないんだろうか。
「でも、結乃ちゃん、木崎さんのこと好きみたいですよ。じゃないと、あそこまで変わりませんよ」
 吹き出しそうになった。いや、鼻水はちょっと出た。いや、そんなわけない。
「……まあ、俺は結乃ちゃんのこと好きですけどね」
「じゃあ、いいじゃないですか」
 ぐあ、何いってるんだ俺は。看護師さん、アンタも何言ってんだ。
「いやあの、そういうわけじゃなくてですね――」
「気をつけてくださいね、結乃ちゃん、まだ十三歳ですから」
「何言ってるんですかあんたは!」
「冗談ですよ」
 いや、冗談に聞こえませんでしたけど。何考えてんだこの看護師。
「早めに降りてきてくださいねー」
 そういい残して、看護師さんはシーツを携えて去っていった。あの野郎……いや野郎じゃないが……足治ったら蹴りいれてやる。
 その後三十分くらいして俺も部屋に戻った。日差しは次第に落ちて、風がだんだんと寒くなってきていた。
 ◇
 部屋に戻った俺は、センターまであと何日なのかを数えてみた。あと一月もない。それまでには、センター本番までには確実に退院しているだろうし、今年こそは確実に合格している……と願いたい。ともなれば、この病院とはそれっきりだろう。
「寂しい、のか……?」
 最初の頃は、誰もお見舞いに来なかったことが寂しかったんだっけか? 心理学的に言えば、期待を裏切られたことによる信頼度の低下だ。だが、この病院では、むしろ色々な期待をされている。医者はっさと退院しろとか抜かすし、さっきの看護師さんは俺がいることで結乃ちゃんが明るくなったとか抜かすし、結乃ちゃんは……俺が勉強教えてるし。
 ベッドに横になると、参考書の代わりに漫画を手に取った。心理学の勉強をしたいとは思っていたけども、結乃ちゃんのこともあるし、それから教師になるのも悪くないかもしれない。
 気がつくと、漫画が上下さかさまだった。だというのに、ページのほうは結構進んでいた。ぼーっとしすぎだろ、俺。
「夕飯まで寝るか……」
 俺は布団を頭まで被った。ちなみに、ちっとも寝れなかった。
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