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しょーしきのしょーじきしんどい。
少色適当なことを適当に書きます。
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ある小説家の脳内
読んでくれる方は下の[READ MORE]からどうぞ。


 
私はかれこれ七年もの間小説を書いている。七年も書けば、さまざまな技術も身に付くし、色々なハウツー本や小説の書き方の解説書にも巡り会った。そういったものの囲まれた生活をしていると、次第に小説と現実の世界との区別が付かなくなってくるのも、そう無理はないのだろう。私は自分で創作したキャラクターたちと様々な会話をすることができる。別に酒に酔っているだとかクスリに頼っているとかそういった話ではない。キャラというものが固まってくると、キャラというものは次第に自分で、つまり作者の手を借りるまでもなく動き出す。小説を構成する人形でしかないキャラは、己の意志を持った動く人形となるのだ。
 
無論私は気が狂っているのだろう。世間では、気が狂っていると自覚出来ているうちは気が狂っていないのだという。そんな文言にだまされて、「俺の気が狂っているはずがない」といい、発狂して自殺した小説家を私は何人も知っている。

「小説の調子はどうだ? お前じゃ俺ほどの小説は書けないもんな、心配しに来てやったぜ」
 
 私は肩を叩かれて、キーボードを打つ手を休めた。振り返ると、そこには私が創作したキャラの一人、佐宮啓太が居た。

「いや、俺はお前じゃなくて本当によかったぜ。お前みたいな人生はまっぴらだからなあ」

 啓太は私を差してけらけらと笑う。

 佐宮啓太というのは、私が十六歳の頃に作ったキャラだ。何しろこいつは、毎朝元気に保健室に登校し、そこで自前のノートパソコンで小説を書いているという、めちゃくちゃな人間だ。保健室での会話を盗み聞きしつつ、小説のネタにするこいつの神経は、我ながら吐き気がする。それで進学校の定時制に入学してしまうのだから、小説内の人物とはいえご都合主義にもほどがある。

「お前この前、俺にえろ小説書かそうとしてたろ。あれは勘弁してくれよなー、俺のイメージじゃないし」

 何より腹が立つのは、この男、私を歯牙にもかけぬほどの小説の才能を持っていることだ。自分で創作しておいてなんだが、こうやって話しかけてくるようになると、腹立だしいことこの上ない。責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。

 私は啓太に対しできるだけ冷淡な態度をとった。こんな奴を生み出した自分が憎い。私がしばらく啓太を無視し続けると、啓太も私に飽きたらしく、ふらふらとどこかへ行ってしまった。あいつは相手にされなくなるとすぐにどこかへ行く。そんなパターンぐらいはお見通しだ。

「お仕事、順調ですか? 少し、休んだ方がいいんじゃないですか?」

 啓太が去って、私がキーボードを叩くこと十数分、新たに誰かが私に話しかけてきた。声からすると、どうやら佐田結乃のようだ。

「木崎さんが、ずっと一つのことばっかりやってると良くないっていうんです、だから……」

 結乃は恥ずかしそうに私に缶コーヒーを渡してきた。私はそれを恭しく受け取る。

 佐田結乃というのは、私が十七歳の時に創作したキャラである。何か病院を舞台にした小説を書こうと思い立ち、何気なく骨折した浪人生というイメージを思いついた。そこから派生した、とりようによってはワンパターン、典型的というか使い古された設定である、幼い頃から心臓病という設定を与えられた十四歳の少女が佐田結乃である。彼女がいう木崎というのは、その浪人生のことで、年の暮れに入院することになり、結乃に勉強を教えて、結局結乃とつきあうことになっている男だ。死ねばいい。

 まあ十九歳と十四歳という年齢差は少々問題のありそうなところではある。何せ日本の法律では相手が十三歳未満なら両者の合意があろうと無かろうと強姦罪が成立する。だが十四歳という年齢設定は適当であったと信じている。十代、特に十三歳、十四歳、十五歳、十七歳というのは小説上の記号として極めて重要であることは少しでも小説をか
じったことのある人間なら明白であろう。

 佐田結乃のが出演している小説は完結している。一つの世界の簡潔として完結している。彼女の頭の中はおそらくは勉強と木崎のことだけである。むしろ木崎がここに一緒に来なかったことの方が不思議なくらいだ。あの二人は決して離れることはないのだろう。書いた私がいうのだから間違いはない。あの二人は決して離れることのない手段で結びついている。それが悲劇であるとは私は思わない。

 結乃は木崎に頼まれてコーヒーを渡しにきただけのようだった。木崎の変に気が利くところは一体どこから出てきたものやら。私は首を傾げるしかない。

「随分精がでますね。はかどってますか?」

 結乃が去って五分とたたずに、新たな来客である。また女か。瑠璃宮翆か。木陰のところに帰るべきだお前は。

「木陰くんが最近どうも冷たいですよ。どう思います?」

 何故私がそんなことが分かるのか知りたい。木陰の話を私にされても困る。書いたのは私だが。

 瑠璃宮翆というのは、私が十五歳の時に造ったキャラクターだ。所謂学校のアイドルという奴で、十五歳、中学三年である。彼女は木陰という性格の悪い男が主人公の小説に出演している。まさか木陰なんていう最悪の人間とくっつこうとするなど、頭が弱いとしか思えない。

「木陰くんって、本当は優しい人だって、わたしはずっと前から知ってたよ」 

 学校のアイドルというチープな記号と相反する要素として、彼女の左手首にはリストバンドがある。その下には包帯。リストカットである。我ながらこの組み合わせは良いものだと思う。わかりやすい記号同士を組み合わせると、こうも複雑で不可解なキャラとなるのかと、私としては新しい発見であった。彼女がリストカットをしていると知った時
は、私も大いに驚いたのを覚えている。

「今度は、何の小説なんですか? さっき、啓太くんも来てたよね?」

 瑠璃宮が私のパソコンの画面をのぞき込んできた。そのまま目を上から下へ、一気に読んでいく。

 ちなみに瑠璃宮は啓太と同級生だった。瑠璃宮ぐらいになると、保健室に巣くう変態のことぐらいは知っているらしい。啓太のほうも散々瑠璃宮については調べたのだろうが、瑠璃宮ほど頭が回りはしないだろう。

「書いててむなしく、ない?」

 一通り読み終えた瑠璃宮が私に尋ねた。私は無言で首を横に振った。

「小説内の登場人物が自由に動くっていうのは、仮装した内部の世界を現実の世界と同一視するってことですよね」

 本当に頭が回る小娘だ。瑠璃宮だからまだ良いものの、これが木陰だったら殴ってでも黙らせておくところだ。瑠璃宮は続ける。

「仮想世界を現実の世界と同一視すると、今度は、今現在の現実こそが仮想世界な気がしませんか? 啓太くんが書いている小説の中でもいろんな登場人物が居ますけど、その人たちがいるのは啓太くんにとっての仮想世界で、さらに啓太くんが居る現実世界はあなたが造った仮想世界ですよね。では、あなたの世界は誰かの仮想世界じゃないんですか?」

 瑠璃宮はそう尋ねた。

「わたしたちにとっての現実世界はあなたにとっての仮想世界。ではあなたにとっての現実世界は、誰かにとっての仮想世界かもしれません」

 そういって瑠璃宮は去っていった。

 私はキーボードを叩き続ける。

 もし私が仮想世界の住人であるのなら、私は誰かの意志でこの文章を書いていることになる。私にとっての現実は、ある人間にとっての仮想なのだ。しかしそれは私を絶望させるようなことではない。もし私が仮想世界の人間であっても、私を仮想している現実を生きている人間もまた、仮想世界の住人であるかの人間であるかもしれないのだ。では何が現実か。それは今私が居る世界である。それだけが私にとって現実である。現実とはただそれだけである。例えそれが、仮想世界の人間と交流可能なものであったとしても。

                                         ある小説家の脳内――了
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テーマ:文学・小説 - ジャンル:小説・文学

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