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しょーしきのしょーじきしんどい。
少色適当なことを適当に書きます。
M&B(肉と賭け)第三話『再会にして再開』②
プロローグ 第一話 第二話① 第二話② 第三話①


「ふざけんなよクソガキ、何様だこら」
「山極庵」

 たった今殴り飛ばされた男が、顔を真っ赤にして起き上がった。よっぽど頭にきているらしく、すぐさまジャケットを脱ぎ捨て、庵に向けて拳を振り上げる。それに反応して、口の端に笑みを貼り付けたまま庵が動く。動いた、というよりは跳んだ、というほうが正しかった。菜摘の目には追いつくのもやっとのスピードで、庵は目の前の男の懐にもぐりこんでいた。

「え?」

 男が間抜けな声を上げる。庵は表情を変えもせずに爪型のナイフを男の喉に突きたてる。そのままナイフを横に引き、首の頚動脈と気管を切断、腹に蹴りを入れて床に倒す。男が倒れると同時に、首の傷から大量の血が吹き出した。噴水のような出血が、庵の制服を染めていく。

「それとも、人食い庵のほうが有名か?」
「てめえっ」

 扉の側に立っていた男が、叫びつつ手に持っていたドスを抜いた。そのまま腰だめに構えて庵へと走っていく。男に向き直った庵はポケットへ手を。取り出したカッターナイフの刃を、一振りで露出させる。すれ違いざまにドス男の腕を取る。後ろ手に捻りあげつつ、男の頭を押さえつける。体を密着させた状態から逆手に持ったカッターナイフを男の首に押し付け、力任せに引き切った。折れたカッターナイフの刃とともに、男の口と首から命があふれ出る。

 菜摘の目に映る庵は、滅茶苦茶だった。
 
 庵は人を殺すことをなんとも思っていないらしい。いや、それどころか、この状況を楽しんでいるようにさえ思えた。菜摘だって、食用に何人か殺したことはあるが、それは麻酔をした人間を解体しただけだし、それ以外は、殺人犯から死体を引き受けた場合がほとんだ。でも、庵は違っている。いうならば、人を殺すことに、手馴れすぎている――。

「動くなコラァ」

 部屋にいきなりの怒鳴り声が響く。見れば、サングラスが、よりにも寄って、菜摘の方へと拳銃を向けているところだった。

「やってくれるじゃねえかコゾー、動けばこの女を撃つ」

 そういって、男は銃を構えなおした。多分、狙われているのは頭――冗談じゃない、間違いなく死ぬ。

 見れば、部屋に残っているのは、庵、菜摘、スキンヘッドサングラスの三人。他の人は皆首や目を押さえながら床に横たわっている。

「手に持ってるモン床に置け、ゆっくりこっち来い」

 男がそういうと、庵はあっさりと爪型ナイフと刃の折れたカッターナイフを床に捨てた。男の顔が僅かに緩む。それはそうだ、これで庵は何も武器がないのだから。

 でも、顔を緩めたのは庵も同じだった。男の持っている銃と菜摘を交互に見比べると、大きくため息をついた。

「な、なんだてめえ、早く来い、女を殺すぞ」
「いや、悪い。さすがにそれはないだろ。お前、二人も同時に撃てるのか?」
「……っ!」

 男が庵に銃を向けるよりも、庵がポケットに手を入れるのが早かった。そして男が引き金を引くよりも、庵がポケットから刃物を投げつけるほうが早かった。

 庵がポケットから投げつけたカッターナイフの替え刃は、真っ直ぐ飛んで行き、サングラスを割り砕き男の目へと突き立った。

 ◆       ◆

「うがああああっ、あああああっ、おおおおおおおおおおおおおおお」

 スキンヘッドの喘ぎ声が部屋を揺らす。いちいち警告なんかせずにさっさと撃っていればこんな目に
あうこともなかっただろうに、それが馬鹿だったからいけない。

 さて、とどめは何がいいものだろう。扉やら鍵やらを壊すときに使った鉈は、手入れが全くされておらず、少し荒っぽい使い方をしただけで刃がだめになってしまった。あれでは、傷を負わせることはできても、とどめというには力不足だ。何か、とどめというのには役不足なほどのものがいい。

「お。あれか?」

 ふと、部屋の隅にある麻雀卓が目に留まった。自動式で、かなり重い。多くの借金を作り出してきたのであろう、充分な重さを持っている。

 よし。君に決めた。

 男が呻きながら、片目でこちらの様子を見てくる。まさか見逃してもらえるとでも思ったのだろうか。救いようのない馬鹿だ。いや、

「いや、馬鹿だからこういう仕事してるんだよな」

 庵は卓に手をかけた。まともに運ぶなら二人は欲しいだろうが、精々五メートル、投げ飛ばすならば一人で充分だ。

 男も、ようやく庵のやろうとしている事に気づいたのか、慌てた様子で逃げようとするが、足元に広がった、自分や仲間の血出に滑って転倒してしまう。仰向けに転がってくれるとは都合がいい。

「さて、じゃあ死ね、菜摘手を出した分と、俺の手を煩わせた分で」

 手に力をこめる。卓の端を持ち上げ、ハンマー投げの要領で、体ごと卓を振り回し、体全体でスキンヘッドへと投げつける。瞬間、男の驚いたようなおびえたような表情が見えた。そして、次の一瞬で、麻雀卓は男の腹へとゆっくり高速で落下した。

 男の悲鳴ともうめき声ともつかない時世の言葉は、しかし短く一瞬で途切れた。ここからは見えないが、腹はつぶれ骨は折れ、主に体内が見るも無惨な様相を呈しているころだろう。見た限り、足の骨が折れているのはここからでも確認できたが、それ以外はよくわからなかった。

 ふう。これで一件落着といったところか。

「あー、疲れた。マジで疲れた」

 庵はその場に座り込んだ。久しぶりに動きすぎた。今日一日で何人殺したことやら。賭けは絶対とはいえ、今日は運が凄いことになっている。

 制服のブレザーを脱いで、ネクタイも緩める。暑い。

 部屋の反対側でしゃがみこんでいる菜摘に声をかける。

「無事だったか? ――それとも、殺人現場はきつすぎたか?」

 菜摘はうつむいて黙ってしまった。さすがに質問が意地悪かったかもしれない。やがて菜摘は顔を上げ、口を開いた。

「あの、庵くん……さっきいってた、人食い庵って、何のこと?」

 聞こえないようにいったつもりが、ばっちり聞こえていたらしい。

「いつの間にかそういわれてたからなあ。なんでもギャンブルで人の身包み剥いでいってたらそう呼ばれるようになっちまった」

 なんでまたあんなあだ名がついてしまったものやら。恥ずかしいことこの上ない。

「……じゃあ、もう一つだけ、聞いていい?」
「何でも」
「ひょっとして、今朝やってた事件も庵くんなの?」
「ん。まあ」

 気づかれてしまった。いや、この現場を見れば気づくだろう。おそらく、菜摘だけは。

「借金は返さなきゃいけないからなー」

 今朝見つかった男の死体――あれは、庵に対して負債を抱えていた男だった。昨夜菜摘と分かれた後、庵に近づいてきて、何かと難癖を付けてきて、男が菜摘を沈めて借金の返済をしていることを漏らしたので、サイコロの目に従って、菜摘を助ける名目で男をばらし、臓器で借金を返してもらった。男がこのビルの関係者であることを知ったのは、今日のことだったが。

 そのことを聞くと、菜摘は、申し訳なさそうに顔を伏せて、

「ごめんなさい、私のせいで」とこぼした。

 その時の菜摘の表情の、羞恥やら感謝の表情が入り混じっている感じが非常に魅力的であるように見えて、庵は頭をかいた。

「別に何でもいいんだろ、助かったんだから。それだけでいいじゃねえか」

 なんとか、そういうのが精一杯だった。

 そうね、と菜摘が納得したようなので、庵は立ち上がった。ブレザーを菜摘の肩にかけてやり、手を差し出す。

「帰ろうぜ。今日は送って行ってやるよ」
「……送り狼?」
「待て」

 菜摘の予想外のボケに思わず突っ込みを入れる。それを行った当人は、未だに立ち上がろうとせず、慌てる庵を見て、顔をほころばせていた。

 まあ、充分に本調子ってことだろう。

「お前なあ……いや、まあいや」

 庵は、強引に菜摘の手を取って、引っ張って立ち上がらせた。肩に手を置き、耳元で囁いてやる。

「俺を食べてもいいのは、お前だけだぜ、菜摘」

 それを聞いた菜摘は、さながら死刑宣告のように、庵に向けて、いった。

「わたしを食べていいのも、貴方だけよ、庵くん」
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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