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しょーしきのしょーじきしんどい。
少色適当なことを適当に書きます。
M&B(肉と賭け)第三話『再会にして再開』①
プロローグ 第一話 第二話① 第二話②



「……あてて」

 庵は頭の痛みとともに目を覚ました。どうやら、どこかのビルの一室、倉庫のようなところに連れてこられたらしい。つい最近、どこかでみたことがあるような壁の色に、少々疑問を覚えたが、やはり、この手のビルは同じような壁の色だろうか。

 起き上がろうとして、両手足が縛られていることに気がついた。しかも、手足だけでなく肘と膝までロープで縛られている。用心しすぎというか、よく面倒がらずにやったものだと、逆に関心してしまう。

 辺りを見回す。薄暗くて狭い。体を動かすと、あちこちにぶつかる。暗さからして、連れ去れてからまだ大して時間はたっていないらしい。今の時間は、精々九時半から十時半といったところだろう。

 部屋の奥に、菜摘の姿が見えた。向こうも、庵ほどではないにしても、両手両脚が縛られた状態で床に転がっていた。まったく、ひどいことをする連中だ。見た感じに外傷はなさそうだったが、とにかく声をかける。

「大丈夫か菜摘? 怪我は? 動けるか?」
「特には。わたしは、何もされなかったみたい」

 菜摘は、寝返りをうってこちらをむいた。動かないもんだから意識がないのかとも思ったが、目は覚めていたらしい。ひとまず安心した。

 しかし、これで状況ははっきりした。連中は、菜摘を沈めて、庵のほうは、まあばら売りにでもするのだろう。菜摘が何もされていないのは、ただ単に、商品になる女に傷をつけないようにというだけだろう。

「……一体、何が起こったの?」
「あー、いや、それは」

 どう答えたらいいものか。そりゃあ、菜摘のほうにも問題はあったが、まさかこんな方向に話が転がるとは思っていなかった。

「いや、すまん、俺のミスだ」

 とりあえず、そう答えておく。

「庵くんの?」

 菜摘が不思議そうに聞き返してきた。そりゃあ向こうは何も知らないんだから、疑問に思っても当然だろう。当事者のくせに。

 まあいいか。

 たまには話してやるのも。

「全般的には、俺のトラブルなんだけどな。……菜摘、お前家族は?」

 聞かれた菜摘は、質問の意味が分かっていなそうだったが、すぐに答えてきた。
「父さんが今海外で、母さんは、昨日今日が夜勤。兄さんは大学で、家は、わたし一人」
「健在ならなによりじゃねえか。俺のほうはな、親父が借金作って逃げて、おふくろも蒸発、姉貴も今水商売かな。風俗かもしんねーし」


 庵は、菜摘が息を呑んだのを感じていた。こちらが思っていた以上に驚いているようだ。

「借金はまあ一千万くらいあんのか? 利息もあるから、返しても返してもなかなか減らん。利息だけもチャラにしてくんねーと、こっちは逃亡するしかないんだがな。姉貴が帰ってくるって話はねーし。まあ払い終わるまでは戻ってこないんだろうけどな」
「……それで」

 菜摘の声は震えていた。人を食うよりは、軽い話だと思ったが。

「それで、庵くんはギャンブルしてるの?」
「まあ、そんなとこ。半分趣味だけどな」

 庵は腰の後ろに手を伸ばす。ギャンブルばっかりやってるから、こんなこともあろうかと、ベルトの裏に、剃刀の刃を仕込んでおいたのだ。

 ロープさえ切ってしまえばこちらのものだ。幸いなことに、ここの来る前に準備したものはそのまま手付かずだ。向こうの意識が低いというか、甘く見られているというか、とにかく好都合だ。

 少し指に切り傷はできたが、程なくロープが切れる。手首、肘のロープを切り、内ポケットに隠しておいた、手のひらサイズの爪型のナイフを取り出す。それで脚のロープを切る。そんなに長く縛られていたようではなかったが、手足を伸ばし、体の具合を見る。まだ頭がちょっと痛むが、まず問題ないだろう。

「ねえ、わたしのも。速く」
「おう」

 菜摘に急かされ、庵は立ち上がり、菜摘のロープを切る。ロープ自体がそんなに新しいものではなかったらしく、簡単に切れた。

「どうするの? ここから、出られるの?」

 結ばれていた箇所をさすりながら、菜摘が聞いてきた。そばの棚にカッターナイフがあったので、それを取る。

「できないことはない、が、やるかどうかは、これ次第だな」

 庵はポケットからサイコロを取り出す。途端に、菜摘の顔が曇った。

「この期に及んで……」
「いいから、勝負しようぜ。俺が勝ったら、俺だけ逃げる。お前が勝ったら――一緒に、逃げよう」

 後半の言葉に反応したのか、菜摘の顔が僅かに緩んだ。これなら勝負を蹴ったりはしないだろう。

「先攻は譲るぜ。ほら」

 庵はサイコロを手渡す。ファミレスのときと同じだ。菜摘は手の中で何度か目を確認してから、

「何やってんだてめえら、殺されてえのか」

 唐突に、部屋の扉が開いた。そこに立っていたのは、どこかで見たことのあるパンチパーマ。

「よう、久しぶり。また今度も頼むぜぶっは」
「しゃべんな、くそがき」

 パンチパーマに声をかけたところで、思いっきり殴られた。そりゃあ向こうもこんなところで庵に会うとは思わなかっただろうし、殴りたくなるのも当然だ。口の中が切れたらしく、血の味が口腔に広がっていく。

「どうやってロープ切った? まあいい、こい、女」

 男は庵を見下ろして、菜摘の手を掴み、無理矢理に引っ張る。

「ちょっと、ねえ、やめてって、やめろ!」

 反射的にか、菜摘の手がパンチパーマに向けて振り下ろされた。突然のこととはいえ、さすがに女の攻撃、パンチパーマは逆の手で菜摘の腕を押さえ込んだ。

「う……」
「大人しくしてろっていったんだよぼけ。行くぞ」

 ――――パンチパーマは両手が塞がっている。こちらにも関心を向けていない。行ける――

 庵は爪型ナイフの歯をむき、右手に。さっき見つけたカッターナイフを左手に。腰を軽く落とす。筋肉を僅かに緩める。緩めた部分を、一気に緊張させ――

「なにガキと遊んでんだ、行くぞ」

 ――二人目! 庵は踏み出しかけた足をすんでのところでとめ、ナイフを二本ともポケットにしまう。今襲おうとしたことがバレてはまずい。向こうがこちら以上の武装をしているとしたら、うかつに動けない。

「しかし縁があるなあ、おめえとはよう」

 今しがた入ってきた男は、異様なほどに派手な柄のシャツだった。むしろ、こんなデザインの服があることに驚きだ。

「おめえなんなんだ? 邪魔しやがって。女は預かっからよう、お前はここで大人しくしてろ、な?」

 そういうと、柄シャツは庵の肩を叩いた。触るな下衆野郎、と内心で毒づきつつ、必死で殺気を抑える。今気取られたら何も始まらない。

「あんま遅くなっとボスにどやされっぞ、急ぐべ」
「おう、今行く」


 菜摘は部屋から連れ出され、部屋には庵だけが残った。庵は一つ、大きくため息。

「ったく……何でまた、こんな面倒なことに」

 菜摘と関わってから、ロクなことがない。今日だって、菜摘に会おうとせずに、家で大人しくしていればなにも問題はなかった。それがこれだ。やくざに拉致され倉庫に閉じ込められ殴られ、最悪だ。

「賭けに負けたのは――まあ、仕方ねえか」

 庵は菜摘が振ったサイコロを拾った。

 目は六―六で十二だった。

 ◆       ◆

 菜摘はようやくことの顛末が分かりだした。要するに、自分は騙されていたのだ。自分のところに声をかけてきた男は、単に菜摘を労働力として囲い込もうとしていたということらしい。ああいった掲示板に常駐している人間なら沈めても問題にならないと思ったに違いない。今までもあの掲示板で何組かカップルができていたことがあったが、もしかしたら、それも今回と同じようなことだったのかも。

 どれくらい歩いたのかは分からないが、さっきの倉庫らしき部屋よりはいくらか広い、事務所らしき部屋についた。窓際に学校で教師が使っているような机があり、部屋の隅には緑色のラシャが貼られた卓が置いてあった。卓の反対側にはソファが置いてあり、そこにスキンヘッドにサングラスの男が座っている。あとは、部屋のあちこちにパイプ椅子が置かれ、そこに座っている男たちが三人。

 庵を殴り倒した男が部屋に入り、菜摘をここまでつれてきた男が部屋の鍵を閉めた。

「こっちに来い」

 サングラスは、ソファから身を起こしながら、静かにそういった。菜摘が反応できずに固まっていると、後ろからパンチパーマが背中を押した。ふらふらと、スキンヘッドの男のところへ歩いていく。この後、自分が何をされるか、何が起こるか、不思議なまでに鮮明なビジョンが浮かんできた。きっとそれは、一生続く。

「服を脱げ」

 いつの間にか、菜摘はスキンヘッドの正面に立っていた。男は、サングラスの奥から、値踏みするような目を向けてくる。

「服を脱げ」

 男は二度言った。

 菜摘はただ、胸の中に庵のことを考えた。それだけで、幾分か、目の前が明るくなったような気がした。

「……」

 菜摘がぐずついていると、サングラスは急に立ち上がった。菜摘の顎を持ち、ゆっくりと顔を上げさせてくる。

「おまえは自分の立場が分かってないな。言うことがわからないなら、殺すぞ」

 殺すという言葉に、無意識に肩が震える。いやだ。死にたくない。死にたくない。死にたくない!

 男がゆっくりと手を下ろした。菜摘はゆっくりと制服のホックに手をのばす。手が震えて、上手くホックが外せない。自分は今、食べる側ではなくて、食べられる側なのだ。

 食べられたくない。

 食べられるなら、もっと別な誰か――――――――――――――――――――――――――ごん、という、鈍い音

 突然部屋の扉を叩いたその音に、部屋の全員が振り向いて、音の方向に注目した。

「誰や? どこのもんや」

 一番近くの椅子にいた男が、扉の向こうに声をかけた。しかし返事はない、男が扉を蹴り飛ばしても向こうから音はない。男の顔はすぐに真っ赤になり、

「誰だってんだ、ぶっ殺」

 怒鳴りかけたところで部屋の扉が開き、同時に拳が一直線に顔面へ、男が頭から受身みも取らずに床に叩き付けられた。

「ここの見張りは大したことないな。なにかこう、サブマシンガンとか、ロケットランチャーとか持たせておくべきだな」

 扉の向こうにいたのは。

「突然で悪いけど、菜摘は連れて帰らせてもらうぜ、賭けで負けたのは仕方ないからな」

 頬を紅に染めて――真っ赤な血で――笑っているその姿は、悪魔じみていたけれども。それでもそれは。

「なんなら、お前らも振るか?」

 サイコロをこちらに投げて寄こしたのは、間違いなく山極庵だった。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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