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しょーしきのしょーじきしんどい。
少色適当なことを適当に書きます。
M&B(肉と賭け)第二話『会肉(ミート』①
プロローグ 第一話



 翌日庵が教室に学校に着くと、教室中は今朝方のニュースの話題で持ちきりだった。ニュースの速さも、それが伝わるのも、思っていたより速い。いや、仕方ないだろう。本当は今日は学校は休むべきだったろうが、学校に用があるものだからやむを得ない。

「いおりんいおりん! 見たかよあれ、お前の家のすぐ近くじゃね?」
「いおりんいうな」 
 
 どう考えても、自分の家から数百メートルの地点で事件が起きて、まともに学校で生活ができるとは思えない。
 
 席に着いた庵の周りに、昨日金をやった生徒を含め、生徒たちが一斉に集まってくる。暇なんだろうなあこいつら。

「どうなんだよ、やっぱ取材とかされたか? どれくらいの騒ぎだった?」
「見つかったの今朝だったろ。それほど騒ぎが大きいわけじゃなかったが、テレビはいっぱい来てたな。裏口から出てきたからよくわからん」

 ――今朝、三十代ぐらいと思しき男の死体が発見された。

 男は全身に切り傷を負っており、頬や舌、肝臓や胃や腸、臀部、腿などの、いうならば、食べられそうな部位がことごとく現場に存在しなかった。確認にきた肉親が涙を忘れて卒倒したとか、ニュースではいっていた。死体の状態がひどすぎるので、報道陣はそろってカニバリズム殺人とか、人肉食嗜好者現るとか、センセーショナルに好き勝手報道していた。今のところ遺体の写真は公表されていないが、朝の報道番組ではイラストで死体の状態を解説していた。

「いいか、みんな、この事件には裏があるんだ。この内臓を取るという残忍性、しかも被害者が借金を負っていたという噂もある。つまりこの二つのことから考えると、この地域には、負債者を人肉工場へと回す組織があるっていうことなんだ!」
「「「な、なんだってー!?」」」

 クラスの眼鏡代表、桐林に同調し、クラスの数人が叫んだ。どうしてまた、こんな時だけノリが良いのだろう、このクラス。

 庵は授業道具を机にしまうと、念のため、事件に対する今後の予定を立てることにした。昨日の夜のファミレスの件から、今日のこの事件。立て続けに起こるってことは、なにかある予兆かもしれない。

 昼食前のポーカーで友人達から昼食代を奪った庵は、学校のコンピュータ室で昼食をとっていた。コンピュータの画面上には、人食関係のコミュニティサイトや掲示板のトピックなどが、五つのウインドウに、十二ずつのタブで開かれていた。さすがに学校のパソコンではここまでやるとだいぶ処理速度も通信速度も遅い。近所のネットカフェのほうがまだ速いくらいだ。

 カニバリズムと事件の関係を調べるためにあちこちのサイトを開いて見たはいいものの、うっかり購買でチキンサンドを買ってしまい、さすがに肉をまともに食えない。おかげで庵は、肉を抜いて、わずかなレタスだけを食べる羽目になった。

 今回の事件は、どの掲示板、どのコミュニティでも話題になっているようだった。どうやら現場近くに住んでいる人間が積極的に情報を出しているらしい。元々日陰に居る連中だから、注目されるのが嬉しくて仕方がないのだろう。

 抜いたチキンを外に捨てると、庵は改めて、目の前の情報の群れと対峙した。いくら人肉食という特別な嗜好であれ、相手は人間、コミュニケートできるはずだ。

『昨日妹を殺して食った。子宮には俺の子供がいた』
『近親相姦乙』
『それなんてエロゲ?』
『詳しく頼む』
『証拠は? うpは?』
『ほれ>>うp http://※※※※※※※※※※※※※』
『グロじゃねえか死ね』
『俺を食べてくれる人募集中。電話ください090-※※※※-※※※※」
『お互い食べながらするセックス最高。指噛みちぎられてイッた。試してみ、マジで』
『わかる! 俺の女も乳首噛みちぎられてイッてやんのwwwwマジウケルwwwwww』

 頭が痛くなりそうな文章だらけで、庵は頭を抱えた。いや、半分以上は悪ふざけでやっているのだろうが、それでも、こんなことを平気で文章にできる人間が居るのかと思うと、背筋が寒い。目を通した画面を、片っ端から閉じていく。

「いや、待った」

 閉じようとした画面の一端に目がとまる。『肉食愛好会』とかいう、一見普通の名前の掲示板だ。

『私は高校二年の女です。わたしに食べられたい人を募集してます。I県M市のファミレスで待ってます』
『俺行く。用事あるから夜の九時頃でどう?』

 その書き込みの後に、お互いの写真を交換したり、服装について約束したらしい書き込みがあった。女子高生の方は制服で行くことになっているらしい。自然とマウスに力が入る。

 書き込みの時間は昨日の昼間。I県M市のファミレスといえば、昨夜庵が行ったあそこしかない。

 まさか、この書き込みは?

 どうやら、必要のない地雷を踏んだらしい。

 庵は写真へのリンクをクリックしてみたが、リンク先のアップローダーにはすでに画像がなかった。かなり流れるのが速いらしい。代わりに、掲示板のアドレスを携帯に転送する。幸いなことに、掲示板はコンピュータと携帯で共有のタイプだった。件の書き込みを画面メモに保存してから、庵はコンピュータ室を出た。

 こういったことは、本人に聞くべきか、周囲に聞くべきか。庵は廊下へサイコロを振った。目は四で偶数。ならば本人に聞くことにしよう。

 ――宍人菜摘は、本当に人を食べたのかどうか。


 掲示板の内容を古い順に掲示板で辿ってみると、どうやら菜摘と思しき人物は今年の春頃から掲示板の常駐するようになり、いつも鮮度の高い情報を持ってくることで有名だったらしい。そりゃあ、実際に食べてるのだとしたら、臨場感のある表現もいくらだってできるだろう。

 庵は三年三組の教室前まで来て、携帯を閉じた。庵の学校では、三年三組は看護・医療系死志望の女子のクラスになっている。非常に入りづらいし、そもそも庵はこの教室内に知り合いなんかいない。やはりやめたほうがいいか。周囲の目がこちらに向く。ひょっとしたら、自分の名前が、ここでも悪いイメージを伴って広まっているかもしれない。

 ポケットからサイコロを出し、振る。目は五、奇数。なら行こう。どうせいいイメージをもたれるようなことはなにもしていない。毒を喰らわば皿までだ。

 廊下の窓際で談笑していた女子に声をかける。向こうも相当面食らっていた。

「あのさ、宍人さん、知らない? ちょっと、用があるんだけど」
「菜摘? 今日来てないよね?」
「来てない来てない。つーか、今週来てないよね?」

 だとすると、昨日制服を着てたってのは、わざわざ待ち合わせるためだけに制服になってたということか。なんでまたそんな面倒な真似を。

「わかった。どうも」

 どうでもいい女二人に形式的に礼をすると、庵はとりあえず教室に戻った。五時限目の授業ももうはじまるころだ。教室に戻り、席についたところでチャイムがなった。初老の教師が教室に入ってきて、現社の授業が始まる。

 ――すくなくとも、今日の夜まで動きはないだろう。昨日の夜九時に、菜摘は確かにファミレス前に居た。問題は、庵が帰った後の動きだ。さっきの書き込みをみて、しかも今日学校に来ていないということは、あの後家に帰っていないということも考えられる。まずはなにより、菜摘と接触することが必要だ。

 授業が板書に入ったのを見て、庵は教科書の陰に携帯を出した。さっき見つけた掲示板を開く。菜摘が無事だというのなら、この掲示板から接触できるだろう。

『林高の三年生ですけど、俺のこと食べてくれる人募集中です。場所は↑の人と一緒で』

 あまり分かりやすすぎるのもどうかと思うが、これくらいでいいだろう。菜摘にとって、この書き込みで自分のことがある程度想起できるなら文句はない。場所を限定してくる人間というのなら、向こうだっていくらか想像がつくというものだ。

 新規書き込みに自分の書き込みが表示されたのを確認すると、庵は携帯を閉じた。電池が消耗気味だ。電池切れを起こすのはまずい。
 ◆       ◆
 菜摘が目を覚ましたのは、午後一時のことだった。今から起きても、午後の授業に出られないことはないだろうが、さすがに午後の授業だけにでるのもどうかと思われた。ベッドに横たわったまま、そのまま五分間考える。朝学校に連絡もしてないから、担任はさぞかし困っていることだろう。ただ学校は保護者からの連絡でない限り欠席は認めないので、母親がいない今では、連絡してもしなくても同じようなものだ。

 着替えてから冷蔵庫の前に立ったところで、ようやく食材用の肉を切らしていることを思い出した。昨日仕入れ損なったから、しばらくは人肉を食べることができない。それまでその他の動物の肉を食べて過ごさなければ。

 牛乳を一杯だけ飲むと、菜摘は部屋に戻った。パソコンの電源を入れて、掲示板をチェックする。自分の立てたスレッドに、昨夜の件に関しての謝罪のレスがついていたので、それに返信しておく。新たに被食依頼が来ていたので、それについて了解の変事をして、菜摘は、相手のことを想像した。肉付きは普通でいい。無駄な肉が多すぎると、急激に不味くなる。人間の油は食用に向いていないのだ。精々、ランプのシェードにするくらいが関の山。かといって、筋肉質すぎるのもよくない。今度は肉が硬くなりすぎてよくない。これもまた、食用には向かない。ただ、よく運動している人間の肉は、健康であるので、内臓が美味であったりもするが――その辺の事情は、人肉通にしか分からないだろう。

「…………」

 思うのは、昨晩あった庵のことだ。服を着ていたからよくわからないが、少なくとも太ってはいなそうだったし、別段運動をしている雰囲気でもなかった。顔も比較的好みであるし、文句をつけるところはどこにもない。それに、ギャンブル中毒の人間の脳というのはどういう味がするのだろう。何か変わった味がするのだろうか? 指はどうなっているのだろうか? 目は? 耳は?

「……ふふ」

 こみ上げてきた笑いを抑えると、菜摘はベッドに横になった。どうにかして、庵を食べたい。今返信した相手よりもなによりも、庵を食べたい。

 やっぱり学校行けばよかった。

 ◆       ◆

 きっちり七時限目の授業は時間丁度に終わった。いつもは長引く数学の授業がきっちり終わったというのは、いいことではあるものの、やはり、いつもとは違うというのは不気味で気味が悪い。いつも通りに、何事もないのが一番いいことだ――とは、庵は少しも思わない。そうならわざわざサイコロなんか振らないだろう。

 掃除に散っていく同級生を横目に見つつ、庵は携帯を開いた。電源を入れる。返信があれば儲けものだ。苦労もなく菜摘から話を聞ける。……まあ、ここまでに苦労は続いているが。

 掲示板を開く。新着の書き込みが庵のものを含めて三件。おそらく庵の書き込みへの返信だろう。携帯のサイドボタンで一気にスクロールし、書き込み内容を確認する。

「ん?」

 思わず、携帯を落としそうになった。手が震えてきた。

 庵の書き込みに返信はなかった。それがまず問題だった。菜摘はまだ、この書き込みを見ていない。それよりも問題なのが、菜摘が返信している書き込みだった。たった一分、庵が携帯から書き込み、電源を切るよりもほんの一分早く、書き込みがあった。昨日と同じらしい男が、同じ内容で、今日の夜を指定して。

 ますます面倒なことになってきた。このままだと、指定した時間に庵が行っても、相手にされないだろうし、昨日の件からして無視されること請け合いだ。菜摘が時間前に来ていれば、事情を説明することもできるだろうが、もし菜摘が時間に遅れてきたら、すなわち、返信した相手よりも遅く来たら、どうすることもできない。

 庵はため息をつくとポケットからサイコロを取り出し、振る。目は四。

 仕方ない。

 付き合うことにするか。

 ならば準備に取り掛かろう。賭けに勝つためには、多少の手間が必要だ。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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